「プリウスPHV」に採用された三菱ケミカル、自動車向け炭素繊維にかける!

埼玉に加工の新工場、来年稼働へ

 三菱ケミカルは炭素繊維加工の新工場を建設する。子会社のチャレンヂ(埼玉県狭山市)が工場を建設し、早ければ2018年半ばに稼働する。主に熱間プレス成形法(PCM工法)を使った自動車向け炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品などを開発、量産する。投資額は最大で40億円とみられる。

 三菱ケミカルは炭素繊維の生産規模で東レに次ぐ業界2位。近年、CFRP部品の開発を強化しており、自社に一定量を生産できる拠点を整備する狙いがある。

 新工場はCFRP部品の開発と製造を手がけるチャレンヂの本社工場近隣地に建設する。敷地面積は約1万6000平方メートル。生産設備の詳細は明らかにしていないが、プレス機などを数台導入し、PCM工法を使った自動車や航空機向けのCFRP部品を量産するとみられる。

 PCM工法は三菱ケミカルが4月に統合した旧三菱レイヨンとチャレンヂが共同開発した成形法。炭素繊維織物を型内に置いた後に樹脂を含浸して硬化させるRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法に比べ、工程数が少ない。さらに成形作業時間は5分前後と量産に向く。

 CFRPのPCM工法は欧州や日本の自動車メーカーが採用したほか、米大手部品メーカーなどと実証実験に入っていた。

日刊工業新聞2017年6月2日


プリウスPHVのバックドアの骨格部材に成形した三菱ケミのSMC

「欧州がリードする」


 「これからは自動車用の炭素繊維を伸ばす」。三菱ケミカルの越智仁社長の狙いは明確だ。3月にはトヨタ自動車が新型「プリウスPHV」のバックドアの構造部材に採用し、量産車が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品を採用するのは珍しく、話題をさらった。

 三菱ケミカルは自動車用途の拡大を見越し、炭素繊維中間材(プリプレグ)や成形技術の開発に先行投資してきた。量産車への採用が増え、自動車需要が本格化すると見られる20年以降に向け、これまでの“蓄積”を事業へ落とし込む作業を本格化する構えだ。

 同社が自動車市場を狙ううえで重要な戦略製品の一つが、長さ数センチメートルに切った炭素繊維を含んだ樹脂シート「シート・モールド・コンパウンド(SMC)」だ。SMCは2―5分程度の短時間で成形できる。

 連続した炭素繊維を使う一般的なプリプレグよりも複雑な形状の部品を得意とし、生産性の高さと設計の自由度を求める自動車メーカーへの訴求力は高い。

 同社は現在、豊橋事業所(愛知県豊橋市)にSMCでは世界首位の年産3000トンの生産設備を持ち、ドイツに建設した同1000トンのプラントが近く稼働を予定する。

 ドイツ拠点は同6000トンまで能力を引き上げる構想を持つ。同社は「自動車の炭素繊維部品は欧州がリードする」(三菱ケミカル幹部)とし、需要動向を見ながらドイツ拠点への投資を続ける模様だ。
                

日刊工業新聞2017年4月24日の記事から抜粋


日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月03日
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 炭素繊維は原料のポリアクリロニトリル(PAN)繊維やコールタールピッチ繊維を不活性雰囲気下で焼成し、炭素以外の元素を離脱させた無機繊維。比重は鉄の4分の1で、比強度は10倍。寸法安定性が高く、耐熱性や耐薬品性に優れる。通常はエポキシなど合成樹脂と組み合わせ複合材料として使う。構造制御が比較的容易なPAN系が生産の大部分を占め、用途は航空機や圧力容器、風力発電ブレード、自動車部品、スポーツ用具など多岐にわたる。
 足元の年間需要量は約6万トンで、うち2万トン程度が汎用品のLTだ。これまでは20年頃の需要量を14万トン台と見る向きが多かったが、航空機向けの低迷を受け、同10万―11万トンに下方修正する見方が広がっている。炭素繊維は台湾やトルコなどの新興勢力の品質向上が進むほか、欧米メーカーも需要の取り込みに躍起だ。汎用分野では中国メーカーの規模拡大も懸念材料。中間材や成形技術の開発は日本勢が大きくリードするが、炭素繊維のみの販売では早晩、新興国勢との価格競争に巻き込まれるとの危機感がある。
(日刊工業新聞第ニ産業部・小野里裕一)

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