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三井物産社長が語る新設「最高デジタル責任者」の役割

「予見もたずに既存事業にAIやIoTを生かす」
三井物産社長が語る新設「最高デジタル責任者」の役割

安永竜夫社長

 三井物産は2016年3月期、資源価格の下落から創業以来初めて赤字に転落した。20年3月期を最終年度とする3カ年中期経営計画はこれを踏まえ、3年で1兆7000億―1兆9000億円を投じ、非資源分野を中心に事業基盤を強化する。安永竜夫社長は「モビリティーや農薬などの分野を成長領域」に定める。安永社長にかじ取りを聞いた。

 ―収益の拡大を目指す非資源分野は、どのような事業に力を注ぎますか。
 「17年3月期は非資源分野の当期利益が1466億円となり、最高益だった。機械・インフラ分野を中心に事業がしっかり育ってきている。今後3年で、自動車や鉄道などのモビリティーや農薬などの分野を成長領域として投資などをしていけば、非資源分野の当期利益目標の2000億円は達成できる」

 ―現在の収益基盤となっている資源分野は、既存事業の立て直しが焦眉の急です。
 「エネルギー分野は豪州や米国のプロジェクトが順次立ち上がってくる。今後も資源価格の上値は重いが、生産量の増加とコスト削減で、当期利益2400億円という20年3月期目標を達成する。機械・インフラ分野では、プロジェクトが完工したら、IPO(新規株式公開)や一部の権益を売却するなど、デベロップ&セルのメカニズムを取り入れて、早期に資金を回収しながら、新規事業を立ち上げる仕組みを作りたい。」

 「資源分野に限らず、460の事業会社一つひとつのパフォーマンスを、本社のコーポレート部門の事業再生などを担うチームが第三者目線でチェックし、事業改善に着手する取り組みを始めている。赤字の案件から手を付けているが、聖域は設けず、収益力の底上げにつなげる」

 ―最高デジタル責任者(CDO)を新設しましたが、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)をどのように活用しますか。
 「ICT(情報通信技術)の技術革新は商社だけでなく、いろいろなビジネスモデルに変化や影響をもたらす。独立系発電事業者(IPP)の事業では、発電所をIoTで制御し発電ロスを減らせば、新たに発電するのと同じ規模の供給が見込める。CDOは既存事業にAIやIoTをどのように生かせるか、新たなビジネスモデルは生み出せるのかを、予見をもたず、いろいろなアイデアをリサーチして事業に置き換えるのが役割だ」
(聞き手=高屋優理)
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
中期経営計画の投資は金属資源やエネルギーといった資源を中心とする中核分野に65%、機械・インフラ、化学品などの成長分野に35%を配分する。資源価格が持ち直し、非資源分野へ移行する緊急性は後退している。だが、2020年以降を見据えれば、成長分野の新規事業立ち上げを進めることが持続的成長に欠かせない。

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