廃炉の行方を左右する“筋肉ロボット”

燃料デブリ取り出しに開発進む

 福島第一原子力発電所の廃炉作業の中核工程となる、燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の取り出しに向けたロボットの開発が歩み出した。国際廃炉研究開発機構(IRID)と日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)などは、燃料デブリ取り出し作業を想定した「筋肉ロボット」と呼ぶロボットを公開した。放射線のきわめて強い環境下でも稼働するよう工夫されており、まさにこのロボットの出来栄えこそが、今後の廃炉の行方を左右することになる。(広島・清水信彦)

 広島市西部の丘陵地帯に中外テクノス(広島市西区)が2016年に建設した「電機システム開発センター」。福島第一原発の炉心下部を実物大で模したこの設備で、筋肉ロボットの開発が進められている。

 筋肉ロボットの特徴は、アーム部に通常のロボットのようなモーターを使わないこと。代わりに水圧シリンダーとバネを備える。

 シリンダーは関節部に4個ずつ取り付けられており、このうちの2個が伸びるとその反対側に関節が折れ曲がる。軸数自体はアーム1本で6軸と通常と変わらないが、一つの軸がどの向きにも曲がることができる仕組みだ。

 水圧機器の制御装置など、電気を使う機器はロボットから離れた所に置かれ、この間はチューブでつながれている。アーム本体には電気機器を使わないため、水中でも動かすことができる。

 このロボットの特徴について、廃炉作業の指揮を執る日立GEの黒沢孝一主管技師は「つくりが単純で柔らかい構造。何かにぶつかっても壊れる可能性が低い。普通の多軸ロボットに比べて操作しやすい」と話す。

 日立GEと中外テクノスは、このアームを搭載したロボットをこれまで5タイプ開発した。アーム4本を備えた移動型や、アーム1本の移動型、アーム2本と足4本を持ち、水中でも動くタイプなどだ。

 現在は、デブリに見立てた固形物を電動工具で破砕してベルトコンベヤーなどで運び出したり、バルブを開閉したり鉄管を切断したりと、想定される作業をロボットでこなす実験を重ねている。

 今後、実際の作業に向けては、放射線に弱いカメラをどう配置するかや、動作の精度と速度をどう高めるかなど多くの課題が見込まれる。デブリ取り出しを、冠水させてやるか空気中でやるか、横から接近するか上から接近するかという大きな方針も、今年夏に決まる。

日刊工業新聞2017年5月24日

清水 信彦

清水 信彦
05月28日
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「廃炉に向けて一番時間がかかるのがロボットの開発。確実に大丈夫といえるところまで積み上げて持って行かなければならない」(黒沢技師)と課題の洗い出しに全力を傾けている。

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