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スバル社長が本当の勝負どころと読む20XX年

吉永社長インタビュー「数字をよく見せることに走らない」
 SUBARU(スバル)が2020年以降を見据えた研究開発を本格化している。17年度は21年に発売する電気自動車(EV)開発など試験研究費に過去最大規模となる1340億円を投じる。電動化や自動運転など車業界が変革期を迎える中、限られた開発資源で将来への布石をどう打つのか。吉永泰之社長に今後の戦略を聞いた。

 ―試験研究費を積み増しています。
 「新型車の投入が続く19年ごろまで販売は大崩れしないだろう。スバルにとっての勝負は20年以降だ。21年に発売するEV開発など先を見据えた投資を進める。今、車の販売が好調なのは4―5年前にちゃんと仕込みができていたから。17年度は営業減益の計画だが、数字をよく見せることに走らず、やるべきことをやる」

 ―限られた開発資源をどう活用していきますか。
 「開発は電動化への対応を最優先にする。その次に自動運転技術、コネクテッドカー(つながる車)関連技術が続くイメージだ。欧州や中国メーカーの動きを見ても企業規模を問わず電動化への対応は避けられない。競争は激しいがスバルらしいEV開発を目指す。電動化に限らず次世代に向け他社と協力して開発を進める領域は増えていくだろう。単独開発にこだわってはいない」

 ―スバルがリードしてきた運転支援分野は競争が激しくなっています。優位性は維持できますか。
 「今年高速道路で渋滞時に前方車両を自動追従する運転支援技術を発表する。これまで世界各国で取得した走行データを生かし、むやみやたらに警告音が鳴るようなシステムではなく、車の走行状況に応じた丁寧で柔軟な制御を実現したシステムに仕上がった。今後もこの領域で負けないようにする」

 ―主戦場の米国市場が減速していますが、どう見ていますか。
 「米国の全需はピークアウトし、車各社が需要喚起のため(車の値引きに相当する)販売奨励金を増やしている状況だ。スバル車の売れ行きはもちろん、過剰在庫になり車の価値を下げないよう(在庫状況を)従来以上に注意深くみている」
日刊工業新聞2017年5月22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
17年度も営業利益率が12%と高収益力を維持する見通し。ただ吉永社長は「まだ安定的に利益率2ケタを出せる実力があるとは言えない」と冷静に分析する。電動化への対応をはじめとする次世代車に向けた思い切った投資は、ブランド力を磨き、中長期の安定成長につなげるための強い決意の表れと言える。 (日刊工業新聞第一産業部・下氏香菜子)

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