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たった二人で始めた航空機部品加工、今やIHIの頼れる存在に

エイチ・エー・ティー、エンジン回りの試作開発に強み
たった二人で始めた航空機部品加工、今やIHIの頼れる存在に

放電加工によって航空機部品の難削材の加工を容易にし、要求スピードに応える

 エイチ・エー・ティー(東京都国立市、吉田隆史社長)は、航空機部品の加工を手がけ、主にエンジン回りの試作開発に強みを持つ。超硬合金などの難削材を放電加工で精度高く仕上げ、顧客の要求精度を満たしながら、スピード感を持った対応で信頼を獲得してきた。

 同社の取引は航空機関連を手がけるIHIが8割を占める。東京都国立市の本社工場では試作開発、2009年に建設した福島事業所(福島県南相馬市)は主に量産加工に対応する。

 航空関連のエンジン部品は耐熱、耐摩耗、耐腐食性が求められるため超硬合金といった難削材を手がけることが多い。同社が得意とする放電加工は、水や油などの液中で電気エネルギーを使って材料を加工する。非接触式のため材料にストレスを与えない。

 吉田社長は「大きな治具を必要としないので、段取りに時間が取られない。取りかかりのスピードが速い」と、顧客からの要求に応えられるメリットを強調する。

 放電加工といっても種類はさまざま。細穴放電加工は、真ちゅうや銅を使った細いパイプ電極を使い、電気エネルギーを利用する。航空機部品が嫌う熱影響を抑えつつ多軸方向への穴開けを可能にする。最も細いものでは髪の毛ほどの穴も加工できるほどだ。

 エイチ・エー・ティーは1998年に創業。2台の細穴放電加工機を用いて、たった2人で始めた企業。吉田社長は「軌道に乗るまで5、6年は自分で加工し営業にも行った」と振り返る。

 成長分野の航空機需要の拡大とともに、少しずつ放電加工機を増やし、事業を拡大させた。さらに依頼の要求に応えるため、航空機関連の製造に不可欠なJISQ9100を取得し、高い品質とトレーサビリティーを備えてきた。

 現在は、校正施設の国際規格「ISO/IEC17025:2005」の認証を取得。部品加工のほかに非破壊事業として、光学計測器の校正など幅広く展開し、新たな成長軌道を描く。
日刊工業新聞2017年5月22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
福島事業所の開設直後にリーマン・ショックの影響を受け、受注が急減。売上高は2億円を下回り、かつてない落ち込みを経験した。さらに東日本大震災も経験し、事業継続の危機も味わう。現在、成長産業である航空機事業の拡大に乗り順調に推移。2017年3月末は7億4000万円の見込みで、大底から約4倍に躍進する。 (日刊工業新聞西東京支局・松崎裕)

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