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「本気で宇宙飛行士になりたい、そのためにタレント活動をする」黒田有彩さん

宇宙の魅力を多くの人に知ってもらう架け橋になる活動
 「夢は宇宙飛行士」と語る、タレントの黒田有彩さん。子供の頃から宇宙に憧れ、宇宙の魅力を多くの人に知ってもらうこと、科学や物理の面白さを伝える架け橋になることをライフワークに活動しています。黒田さんに、学生時代のエピソードや現在の活動について伺いました。


―科学に興味を持ち始めたのはいつごろからですか。
 「この花は赤くて、あの花は黄色く見えるのはなんでだろう」というように、幼い頃から身の回りのことに疑問を持っていました。その疑問を解決してくれるのが科学。小学生のときはよく科学漫画を読んでいました。

―そんな中で宇宙にかかわりたいという夢を持つようになったきっかけは。
 中学の時、「21世紀を幸せにする科学作文コンクール」で最優秀賞に選ばれました。その副賞としてNASA視察ツアーに行ったんです。訓練の様子や大迫力の模型などを見て、「宇宙すごい!かっこいい!」とすっかり虜に。将来は何かしら宇宙に関わりたいと思うようになりました。
 また中学時代の理科の先生が教科書には載っていない科学の面白い話をたくさんしてくれる先生で、その話を通して「宇宙を知るには物理学を学ぶ必要がある」と知り、大学では物理学を学ぼうと決めました。

―その決心の通り大学では物理学を学ばれていますが、一方で芸能界入りも果たしています。
 高校の時にダンス部に入っていて、練習して人前でダンスを披露して拍手をもらう、という一連の流れが楽しくてしょうがなかったんです。「これを毎日やるには芸能界しかないんじゃないか」と秘めたる夢を膨らませていました。そして高校2年の三者面談で進路の第一志望に突然「芸能界」と書いたら、母親も担任の先生もビックリ!その場の空気は最悪に…。
 でも話し合いの結果、「自分の強みを見つけてから、芸能界に挑戦する」という結論になり、いったん大学受験に専念することにしました。そこで自分の強みややりたいこと、を考えた時に宇宙や物理学しかないな、と実感。お茶の水女子大学理学部へ進学しました。

―大学時代はどのような研究をされていたのですか。
 国立天文台で「重力波」の共同研究を行いました。重力波を捉えると、宇宙がどうやってできたか、「宇宙のはじまりの物語」がわかるとされています。
私が研究していた頃は20~30年後に重力波が見つかると言われていたのですが、2016年2月に世界で初めてアメリカで観測されました。そのときはもう祭状態。日本にも「KAGRA」という重力波観測装置があるのですが、そこのホームページのサーバーが落ちたほどです。当時は物理学科の学生でも知らない人がいた重力波ですが、その観測を機に「みんなが興味を持って調べている」ということまでになり、感動しました。
 

―学業に並行して芸能活動も始められました。
 いろんな活動をしている中、大学で物理をやっているということもあって、「リケジョ」という切り口が多くなっていきました。その中でEテレの「NHK高校講座 物理基礎」に出演することに。
それまで「大学で物理を学んでいるのになんで芸能界にいるの?」と聞かれることが多かったんです。たしかに物理と芸能界って一見ねじれの位置にあって交わらないように思えますよね。どちらも好きでやっていきたいと思っていたのですが、私の中でも両者を結び付ける接点を見つけることができませんでした。ですが高校講座では番組の企画段階から携わらせてもらって、高校生に物理の面白さを伝えていく中で「自分が接点になればいいんだ」という思いが生まれてきました。私なら、物理を食わず嫌いしている人を振り向かせることができるんじゃないかと。

―「物理の面白さを伝え、親しみを持ってもらう」というのが接点になったのですね。
 物理現象は「そんなの当たり前じゃん」と言われたら終わりなんです。でもその「当たり前」を科学の目を通した時、地球上で起きていることの奇跡を実感できる。物理を仕事にしなくても、知っているだけで少し豊かになれると思うんです。仕事をしていく中でも、翻訳者として物理界との架け橋になることを求められていると感じることも増えていきました。

―「翻訳者」として、工夫していることは。
 いろいろなものを擬人化して説明することなんかもあります。例えば太陽系の惑星たちを擬人化したら…など。日ごろから妄想してみたり、身の回りのことに落とし込めないかと考えたりしています。でもそういった擬人化も知識がないとできないことなので、自分の中で知識を深めてイマジネーションを膨らませていきたいです。

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ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「宇宙飛行士とタレント活動」一見全く結びつかないように思えますが、宇宙がいつのまにか身近になっている現在、架け橋になるような「伝える力」を持つ人は必要になるでしょう。黒田さんのように、情報発信が乏しかった分野にどんどん「伝える力」を持つ人が入っていってほしいと思います。

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