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総合化学メーカー、“石油化学に頼らず稼ぐ” 

今期は4社が営業増益も、好況はすでにかげり
総合化学メーカー、“石油化学に頼らず稼ぐ” 

鹿島臨海工業地帯

 総合化学各社の2018年3月期連結決算業績予想は、石油化学に頼らない稼ぐ力が試される。6社のうち4社が営業増益を予想した。畜産農業関連や電池材料、ディスプレー部材などの拡販が寄与しそう。前期の好業績を支えた石化市況の足元はナフサ(粗製ガソリン)の値上がりや一部製品価格の下落など変調の兆しが見える。長年取り組んできた石化依存からの脱却を目指したポートフォリオ改革の成否が、今こそ問われている。

 住友化学が16日発表した18年3月期業績予想は健康・農業関連部門の鶏飼料添加物メチオニンの売価回復がカギを握る。野崎邦夫専務は「メチオニンの価格が(前期に)非常に下がったが、ほぼボトムに来ている」と底打ち感を強調。同部門の営業利益は前期比29・9%増の600億円に回復する見通し。

 また、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)向けのタッチセンサーパネルと偏光フィルムも貢献する。情報電子化学部門の営業利益は同2・0倍の210億円に急伸する計画。野崎専務は「石化の売上高比率は3割まで下がっており、その他で楽しみな事業が出てきた」と市況変動リスクの最小化に自信を示した。

 三菱ケミカルホールディングスはディスプレー用導光板などの用途が堅調なメタクリル酸メチル(MMA)事業が引き続きけん引役となる。旭化成はリチウムイオン二次電池用セパレーター(絶縁材)や救急医療機器の拡販が利益に貢献する。

 宇部興産もセパレーターの販売数量が増えるほか、原料価格急騰で遅れた合成ゴムの価格転嫁が進む見込み。減益予想の三井化学と東ソーは石化関連が足を引っ張る。原料高に加えて主力プラントの定期修理などもマイナス要因となりそう。
                   


日刊工業新聞2017年5月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
空前の石化好況はすでにかげりが見える。期後半からは米国でシェールガス原料のプラントが相次ぎ稼働し、市況悪化のリスク要因は増える。各社の脱石化は待ったなしだ。 (日刊工業新聞第ニ産業部・鈴木岳志)

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