24時間営業を止めないセブンがコンビニの優勝劣敗を加速させる

人件費が圧迫、中堅はさらに苦境に

 困った時の駆け込み寺であるコンビニエンスストアのナショナルブランド(NB)品は定価販売が主力。このイメージも変わりつつある。セブン―イレブンが4月下旬に日用品61品目を値下げすると、5月にファミマやローソンも追随。両社とも値段の見直し自体は珍しくないとしているが、セブンが優位性を消費者に印象付けるのを嫌った格好だ。

 値下げの背景には、コンビニの規模の拡大に伴うメーカーへの発言力増大がある。スーパーマーケットやドラッグストアに比べ品ぞろえは少ないが、売れ筋商品の販売量・シェアは大きい。

 セブンは値下げにあたり、メーカー各社と交渉して仕入れ原価を見直した。スーパーマーケットなどと比べると依然割高だが営業時間や立地では有利であり、日用遣いのニーズをこうした業態から奪う狙いだ。

 各社とも頭を悩ませているのが、人手不足だ。高柳浩ユニー・ファミマHD社長は「本当に深刻。流通業は一番厳しい業界かもしれない」と話す。時給の上昇に加え、社会保険の適用拡大や労務時間管理の厳格化で、セブン加盟店の人件費は6年間で約7%増えた。

 コンビニは一部を除き、年中無休が原則だ。人手不足が深刻化する中、外食産業などでは深夜営業を見直す動きが出ている。しかし古屋一樹セブン―イレブン・ジャパン社長は「お客さまの利便性や、品出しなどの作業効率を考えると、24時間営業を止める発想はない」と明言する。

 一方で宅配便の受け取り対応など、サービスは多様化している。作業負担を軽減し、少ない人員をどのように活用するか―。セブンは食洗機、ローソンは自動釣り銭機を導入するなど、技術に活路を見いだす。

 経済産業省もこの課題解決に動いている。レジや検品の時間短縮を目指し、セブン、ファミマ、ローソン、ミニストップ、「ニューデイズ」を運営するJR東日本リテールネットと、25年までに全商品に電子タグを利用することで合意した。

 大手3社が規模を増す一方、中堅コンビニは苦しい選択を迫られている。スリーエフは従業員の約6割に当たる約180人の希望退職を、7月から募集する。

 単独ブランド店をなくし、ローソンとのダブルブランド店の運営などに集中することに伴う。18年2月期連結決算は4期連続の営業赤字を見込む。

 業界4位の宮下直行ミニストップ会長は「一度トップ集団から外れると、戻るのは難しい。(トップ)4社からどう突き抜けるかが課題」と話す。

 経産省が主導する電子タグ活用のプロジェクトに参加するのは規模で勝る上位5社。25年までに実現した場合、実証実験でノウハウを積み、個品管理を可能にして競争力を増した5社と、それ以外の企業でさらに差がつく可能性は否定できない。

 コンビニは専用工場やIT化など大規模投資を伴う“装置産業”でもある。独走態勢構築に向かうセブンについて行くには一定の規模が必要。上位3社の規模拡大とともに、中堅コンビニを取り巻く環境は厳しさを増していきそうだ。

日刊工業新聞2017年5月19日の記事から抜粋

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月21日
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 「売り上げシェア50%に向けてまい進する」―。井阪セブン&アイ・HD社長は独走態勢の確立を宣言した。セブンの店舗数は4月末時点で1万9453と国内最多だ。売上高ベースの17年2月期のシェアは42・7%。「各社ともなかなかセブンに追いつけない」(宮下直行ミニストップ会長)、「若干皮肉ではあるが、下位の優位は上位を研究できること」(高柳浩二ユニー・ファミリーマートホールディングス〈HD〉社長)と、競合他社のトップはその強さを口にする。
 ファミマの店舗は10年間で2・5倍の1万8000超に増加。エーエム・ピーエムやココストアに続き、16年9月にサークルKサンクス親会社のユニーグループ・HDと合併した。ただ21年2月期末の店舗数見込みは現状からほとんど変わらない1万8500。「一定の規模は手に入れた」(高柳ユニー・ファミマHD社長)とし、サークルK、サンクスのファミマへのブランド転換に集中する。
 ローソンは現在1万3000超の国内店舗数を、22年2月期には1万8000にする目標を掲げた。実現すれば店舗数でセブン、ファミマとほぼ肩を並べる。同社はポプラやスリーエフなど中堅コンビニと手を組み、店舗を増やしてきた。ローソンの竹増貞信社長は「ネットワークをますます強化していく」と、提携拡大に含みを持たせる。
(日刊工業新聞第ニ産業部・江上佑美子)

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