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“オリヒメ”のコミュケ力は入院患者を癒せるか!?会話ロボット市場立ち上がる

「より存在が身近に」オリィ研究所が今年夏に発売へ。タカラトミーとドコモの「オハナ」は意図を解釈
“オリヒメ”のコミュケ力は入院患者を癒せるか!?会話ロボット市場立ち上がる

「何もしゃべらない時間を家族と共有できる」とコンセプトを語る、吉藤所長兼CEO

 オリィ研究所(東京都武蔵野市)は、改良を重ねてきたロボット「オリヒメ」を、いよいよ今夏に市場投入する。オリヒメは、一風変わった「テレプレゼンス(遠隔存在)ロボット」だ。入院患者などをユーザーに想定。ユーザーはオリヒメの視点を通じ、離れている家族と共に過ごすことができ、家族の側も首を振り手足を動かすオリヒメと共に過ごすことでユーザーと時間を共有している感覚が得られる。

 吉藤健太朗所長兼CEOは「スカイプなどテレビ電話は、要件がないとかけてはいけない雰囲気がある。オリヒメは、一緒にテレビを見るなど『何もしゃべらない時間』を家族と共有できる」と、コンセプトを語る。入院や不登校に悩んだ吉藤所長自身の青春がオリヒメを開発・事業化する原動力だ。オリヒメという名前にちなみ、7月の七夕シーズンに投入する予定。「ベンチャーキャピタルからの資金調達、代理店との協力も模索し、事業拡大したい」と意欲を燃やしている。 

 まず7月からのレンタル提供開始を計画する。福祉施設、学校、病院などを対象に、使用者とその家族らが遠隔地で体験を共有できる製品として導入を促す。料金は月5万円前後での貸与を想定。年間200台程度の利用を見込む。
 
 量産向けは基本ソフト(OS)「リナックス」ベースのボードコンピューターを搭載。パソコンを不要にし利便性を高めた。無線LAN規格「Wi―Fi(ワイファイ)」を通じ、オリヒメと使用者側の端末の間で動画や音声のやりとりが可能。遠隔地でのコミュニケーションを円滑化し、入院患者らによる家族との会話、学校の授業への参加などを支援する。

 ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)やスマートフォンを用いた使用者側の操作でオリヒメの首を動かし、視認範囲を調節できる。また、あらかじめ設定された「うなずく」「首を振る」「挙手する」「手をたたく」といった動作で多彩な感情表現が可能だ。「動きがある分、テレビ電話などより存在を身近に感じられる」と吉藤所長は強調する。

 同社は2012年設立のベンチャー企業で試作型については福祉、教育関連を中心に50件近くの導入実績を持つ。量産向けの投入で本格的な事業化が視野に入る。
(2015年2015年01月07日/01月13日 機械・ロボット・航空機面)

 関連記事=タカラトミーとドコモ、クラウド型対話ロボットを10月に発売

 タカラトミーとNTTドコモは4日、クラウド型対話ロボット「OHaNAS(オハナス)」を開発し、2015年10月1日に全国の玩具専門店や量販店などで発売すると発表した。スマートフォンなどを経由し、意図解釈機能などを持ったクラウドサーバーに接続してオハナスとの自然な会話が楽しめる。価格は1万9800円(消費税抜き)。

 

 聴力に優れる羊をモチーフにした丸みを帯びた外観でサイズは幅160ミリ×高さ160ミリ×奥行き160ミリメートル。ちょっとした疑問に答えたり、雑談相手になったりする。日本語のみの対応で、多言語対応も進める。

 ドコモの「しゃべってコンシェル」の技術を応用した「自然対話プラットフォーム」を採用。文脈から文章を読み取って最適な会話ができたり、ニュースなどリアルタイムの情報を反映した会話が行える。タカラトミーのH.G.メイ副社長は同日の会見で「強いパートナーがあってこそ実現できた」とし、ドコモの加藤薫社長は「1対1(の関係)から2以上の力になる」と協業メリットを強調した。

日刊工業新聞2015年06月05日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
吉藤氏に最初にあったのはもう4年前になる。当時はここまでコミュニケーションロボットが話題になっていなかったが、ビジコンなどで自分の実体験から語られるプレゼンは、多くの人の心に刺さった。その時から指摘されていたのがマネタイズ。大手企業と同じように会話型市場でぶつかっても意味がない。コミュニケーションロボットであるからには、各社ともハード機器で儲けるつもりはない。スマホと連携してビッグデータからいろいろなサービスを展開するのが王道だろうが、オリヒメはより専門的な部分でどのような付加価値を付けられるか。ベンチャーファンドも興味を持っている。

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