応用数学とスポーツにこだわる明治大学のブランド戦略

土屋学長に聞く。「紫紺の学生でキャンパス周辺をいっぱいに」

 計算科学など数理科学の人材育成が注目される中、4年前に総合数理学部を新設した明治大学。旧帝大と並ぶ数学の拠点構築は、近年の新たな個性といえる。一方で土屋恵一郎学長にとっては伝統の学生スポーツの強化も懸案事項だ。「私は学生や教員、資金を集めて大学のブランドを高めるプロデューサー」という土屋学長に、これらを貫く共通意識を聞いた。
土屋恵一郎学長


 ―総合数理学部の1期生を今春、社会に送り出しました。
 「2007年開設の研究所『先端数理科学インスティテュート』が土台だ。理工学部の数学科もあるが、総合数理学部には純粋数学に対して異端の応用数学の研究者が集まった。数学と社会のつながりは脳科学や気象、交通と幅広い。数学で錯覚を解析し、坂道の交通事故を防止する研究は実用的なものだ。仮想現実(VR)や人工知能(AI)でさらに広がる楽しみがある」

 ―数学で材料形状を工夫する「折り紙工学」を皮切りに、クリーク・アンド・リバー社に研究成果の営業を任せた理由は。
 「学内組織による社会発信では限界があったからだ。同社関連のクリエイターたちが、文系を含む大学の知的財産活用を提案する点に期待している。外部刺激を受け、本学が強いロボットや農学部のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究もさらに発展するはず」

 ―国際化は東南アジア諸国(ASEAN)を重視しています。
 「ASEANの都市環境整備についての教育研究を水や都市交通を切り口に進める。政治経済学部や理工学部建築学科、情報コミュニケーション学部が関わる。経営学や公共政策のプロを育てる専門職大学院において、英語で学位を取る仕組みも整えつつある。すでに修了生がマレーシアの指導層になっているが、他国の学生受け入れも増やす。法科大学院を含め、専門職大学院の改革強化は17年度中にめどを付ける」

 ―大学スポーツへの思いをお願いします。
 「近年の学生の関心は低いが、大学スポーツは大学の活力の象徴だ。そのため、横浜DeNAベイスターズの前球団社長、池田純氏を学長特任補佐に招いた。スクールカラーの紫紺を身に付けた学生でキャンパス周辺をいっぱいにしたい」

【略歴】
土屋恵一郎(つちや・けいいちろう)70年(昭45)明治大法卒。77年院法学研究科博士課程単位取得退学。78年法学部専任助手、85年専任助教授、93年専任教授。東京都出身、70歳。


【記者の目】
大学アピールにたけた社交的なアイデアパーソンと見えるが、一面にすぎない。専門は法哲学、それに能楽・ダンス評論も手がける文化人で、恥ずかしがり屋だと評する人もいる。経営感覚と文化・学術的センスを両立させるバランスのよさは、理事長とともに私立大学を率いるうえで、独自の武器といえそうだ。
(聞き手=山本佳世子)

日刊工業新聞2017年5月18日

宮里 秀司

宮里 秀司
05月18日
この記事のファシリテーター

米国では、一般の人が地元大学のロゴが入った帽子やTシャツを身に着けるなど、大学が街に溶け込んでいます。学生スポーツの興行収入やグッズの売り上げは産業といえるほど。日本の大学もこうした事例を手本に、学校関係者だけでなく地域からも愛される存在に変わっていくべきでしょう。余談ですが小生の大学時代、土屋先生はゼミの指導教授。学生・OBで能を観に行ったり、お茶の水の洒落たイタリアンでワイン片手にゼミの延長をやったりした思い出があります。全てゴチでした。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。