水素社会への秘策、大都市と地方と結ぶ燃料電池バスはどうだろう?

長州産業が開発、地方都市用に小型のソーラー水素ステーション

 長州産業(山口県山陽小野田市、岡本晋社長)は商用水素ステーションがない地方都市への設置を想定した小型ソーラー水素ステーションを開発した。太陽光発電で水素を生成し、燃料電池自動車(FCV)に供給するほか非常時は防災基地として活用する。3年後をめどに、中・四国や九州、東北などの主要都市で年間5―10台程度の販売を目指す。

 長州産業が開発した「ソーラー水素iパワーステーション SHiPS」は、太陽光発電で水を電気分解して水素を作り、圧縮してFCVに供給する。水素を貯蔵することも可能。

 出力10キロワットの太陽光発電を備えた実証機の1日当たりの発電量は約35キロワット時。現在の価格は約2億円に設定しているが、装置の小型化などに取り組んでおり、最終的には1億円程度を目指す。

 商用水素ステーションは全国に88基が設置または計画中だが、多くは4大都市圏に集中しており、地方都市は計画すらないのが現状。一方で自治体を中心に公用車などにFCVやEV(電気自動車)を求める声は多い。岡本社長は「災害時は避難所になる意味を込めて“シップス”と名付けた。エネルギーインフラの改革を担う製品として全国の自治体に提案したい」と期待している。

 同社は太陽光発電システムや半導体製造装置などを手がける。2017年3月期売上高は約300億円。

ファシリテーター・江原央樹氏


 2016年3月に経済産業省資源エネルギー庁が取りまとめた「水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版」によれば、水素社会の実現に向けて、「水素利用の飛躍的拡大」、「水素発電の本格導入/大規模な水素供給システムの確立」、「トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立」の3つのステップを踏む必要があり、国内における水素利用の飛躍的拡大のために燃料電池自動車を2030年まで80万台程度普及、2025年までに水素ステーションを320箇所程度設置することを目標としている。

 近年、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の普及が進んできたが、(一社)次世代自動車振興センターの統計によれば、2015年度の両者の合計国内保有台数は約13万8千台であり、株式会社ゴーゴーラボの統計では2017年4月末時点の国内の充電スタンド設置数が21,686箇所であることから考えると、全国的な利用拡大には時間がかかると思われる。
次世代自動車振興センターの統計

ゴーゴーラボの統計

 そこで政府は、東京都や大阪府といった大都市圏での需要喚起と供給インフラ整備を先に進める計画である。

日刊工業新聞2017年5月4日

江原 央樹

江原 央樹
05月09日
この記事のファシリテーター

一つの提案として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに際した全国の観光需要増を見込み、大都市圏や地方都市間を行き来する中長距離バスや観光バスの燃料電池自動車化を同時並行的に進めてはどうか。水素利用時のCO₂排出量を減らしながら定常的かつ大容量の水素需要を喚起することにつながるため、水素社会実現を更に進める一つの選択肢となりうるかもしれない。

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