今度は本物!?粗鋼生産、10カ月ぶり大台

鉄鋼需要が世界的盛り上がり.保護貿易主義と中国内需の腰折れリスクも

 鉄鋼需要が世界的に盛り上がっている。世界鉄鋼協会(本部ブリュッセル、北京)によると、3月の世界粗鋼生産量(67カ国・地域の合計、速報)は2016年5月以来10カ月ぶりに1億4000万トンの大台に乗った。中国をはじめとする世界経済の回復などが背景にある。同協会は世界の鉄鋼需要が17年に1・3%、18年に0・9%増えると見込む。ただ、保護貿易主義の広がりなどで、先行き不透明感も増している。

 世界鉄鋼協会がまとめた3月の粗鋼生産量は、1億4495万3000トンと前年同月より4・6%増え、11カ月連続で前年を上回った。

 世界の半数を占める中国の生産量が、単月として過去最多を更新したほか、米国や欧州連合(EU)などの主要国・地域も軒並み好調だった。中国の伸びは、政府の景気刺激策で建設需要が増えたためとみられる。

 同協会が3月下旬にまとめた最新版データでは、16年の世界粗鋼生産量(94カ国・地域の合計)も16億2955万1000トンと前年より0・9%増え、2年ぶりに前年を上回った。やはり中国がけん引役を果たした。

 需要は当分、堅調に推移しそうだ。同協会は4月21日に公表した世界需要の見通しで、17年の鉄鋼需要を前年比1・3%増の15億3520万トンと予想した。伸び率は16年10月時点での見通しに比べ、0・8ポイントの上方修正だ。

 内需も堅調だ。経済産業省は輸出を含む4―6月期の鋼材需要量を、前年同期比0・9%増の2330万トンと推計。このうち内需を同1・7%増の1503万トンと見込む。

 日本鉄鋼連盟(鉄連)の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は「東京五輪関連案件が(夏場以降の繁忙期に向けて)着実に動きだした」ことなどから17年度の国内粗鋼生産量が、3年ぶりの前年度比プラスとなった16年度の1億516万トンを、さらに上回ると予想する。

 ただ、先行きには不透明感もある。世界鉄鋼協会は米トランプ政権の政策が見通しにくいことや英国のEU離脱、保護貿易主義の広がりなどをリスク要因として挙げている。
              

(文=宇田川智大)

日刊工業新聞 記者

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05月06日
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業界では中国の内需息切れに対する警戒感も強い。世界の粗鋼生産量は14年に過去最高の16億7000万トンまで増えた後、頭打ちとなった。中国の増産を引き金に、6億トンとも7億トンとも言われる供給過剰状態に陥っているためだ。景気刺激策の内需下支え効果が薄れたら「輸出が再び急増し、他国・地域の生産が下押しされかねない」(業界関係者)と懸念する。
(日刊工業新聞第ニ産業部・宇田川智大)

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