豊洲移転、混迷続く。築地の再整備も浮上

年間100億円の赤字。開業後の赤字と都民の税金投入はもっと膨らむ可能性

 東京都中央卸売市場の移転問題は混迷が続く。築地市場(東京都中央区)から豊洲新市場(東京都江東区)への移転が延期され、小池百合子東京都知事の判断が注目されてきたが、ここにきて築地市場を再整備して使用する案が浮上してきた。また都民や市場業者らが、移転延期で発生した多額の豊洲市場維持管理費用を支出する東京都に対し、費用返還を求める住民監査請求を都監査事務局に提出するなど新たな動きも出てきた。小池知事はどう移転可否の総合的判断を下すのか―。

 4月26日に都庁で開かれた市場問題プロジェクトチーム(小島敏郎座長)は、築地再整備案と豊洲移転案の2案を素案として、打ち出した。築地再整備の場合は約734億円を投じ、7年かけて営業しながらの工事となる。

 豊洲移転の場合は開場後、年間100億円の赤字が出るとはじき、新たな財源確保のため業者への使用料の値上げなども必要になるとした。

 また、「青果部は単独で豊洲移転、水産物は築地市場改修で営業」という分離移転させることも盛り込まれた。

 築地市場青果連合事業協会(泉未紀夫会長)はこれに反発。「青果・水産の総合市場として機能を発揮してきたのが築地市場だ」として、翌日には都の市場のあり方戦略本部(中西充本部長=東京都副知事)に素案自体を検討から除外するよう要望書を提出した。

 小池知事が豊洲市場に移転しないと判断した場合、「豊洲の跡地利用はどうするのか」(都庁関係者)に注目が集まり始めている。カジノを建設する、外資系物流企業に売却して物流拠点にする、などの構想が浮上している。

 ただ、物流拠点としては北関東地域の方が豊洲の跡地よりも土地代が安く、さらに環状線の整備も進み「利便性が高い」(不動産関係者)という声もある。カジノ施設の建設は観光客誘致の加速に寄与するものの、カジノ解禁にはギャンブル依存症対策が必要でもあり、時間がかかりそうだ。

 このため、豊洲の跡地利用を巡って、小島座長が報告書素案で示した商業施設や分譲マンション、小学校を建設する新しい街づくりの構想が現実味を持ち始めてきている。

 築地再整備か豊洲移転か。豊洲の跡地利用構想が浮上し、議論の出口が見えない状況が続く。7月2日投開票の東京都議会選挙を控え、関係者の思惑が交錯する中、小池知事の最終決断が注目される。
(文=大塚久美)

日刊工業新聞2017年5月5日

安東 泰志

安東 泰志
05月05日
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 豊洲への移転については、都議会の付帯決議で地下水を環境基準以下にする旨定められている。現時点でそれが満たされていない以上、小池知事の独断で移転するわけには行かず、更なる土壌対策をするのか、または、議会がその議決を取り下げるかしかない。
 後者の場合は、そのために費やされた900億円近い税金は何だったのかという話になる。また、豊洲移転後には毎年100億円の赤字になるという都庁の試算は、豊洲市場の魚介類の取り扱い量が、年々減少を続けてきた築地の今の取り扱い量の2倍になるという極めて非現実的前提でなされており、また、一般会計からの毎年20億円の補助金や築地売却に伴う受け取り利息まで収入に入れたものだ。
 よって、開業後の赤字と都民の税金投入はもっと膨らむ可能性が高い。いずれにしても、豊洲と築地の都市開発のあり方に立ち返ってきちんと検討すべき問題だ。

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