他社とひと味違うスバルのテストドライバー

車両開発のエンジニアが兼務、改善個所をすぐにクルマづくりに反映

 時速200キロメートルを超えるスピードで走行したかと思えば、ハンドル、ブレーキ、アクセルを巧みに操り、短い間隔で置かれた三角コーンを高速旋回しながら走破する―。栃木県佐野市にあるSUBARU(スバル)のテストコースで、スバル車に乗りこみ高度な運転技能を披露するのは、車両開発担当のエンジニアだ。

 完成車メーカーは一般的に、車両開発のエンジニアとは別に、自動車の性能を確認するテストドライバーを抱えている。テストドライバーが開発中の車に乗って走行データなどを取得し、車両開発のエンジニアに提供する仕組みだ。

 一方、スバルは車両開発のエンジニアが、テストドライバーを兼任する体制をとる。開発者が自らハンドルを握り運転することで、走行性能や乗り心地をじかに体感し、性能を評価できる。改善すべき個所があれば、すぐに車に反映できる利点もある。

 昨秋、全面改良して発売した新型「インプレッサ」も同車を開発したエンジニアが、テストドライバーとして車の性能を評価した。新型インプレッサの開発担当者は「試作車に乗ってテストコースを走ったことが、足回り機構の改善に役立った」と振り返る。

 こうした中、スバルはドライバーの運転技能を高めるために、テストドライバー用の教育制度「スバルドライビングアカデミー」を導入した。「初級」から「特殊」までテストドライバーのスキルごとに4段階のライセンスを用意し、各レベルに合わせた訓練を受けられるようにした。従来もライセンス取得に向けた試験を受ける機会などを設けていたが、技能向上に向けた体系的な教育の仕組みはなかった。

 スバルは大手と異なり、規模が小さく開発資源が限られる。自動運転や電動化といった新しい競争軸が加わり、自動車の開発競争が激しくなる中、高い技能を持つテストドライバーは、魅力あるスバル車を出し続ける上で重要な役割を果たしそうだ。
(文=下氏香菜子)

日刊工業新聞2017年5月2日

明 豊

明 豊
05月02日
この記事のファシリテーター

5月といえば「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」が開催される。07年から参戦しているトヨタで、「トップガン」の異名を取った伝説のドライバーが故成瀬弘氏。トヨタがニュル参戦に向かうきっかけは02年にまでさかのぼる。当時、常務役員だった豊田社長に対し成瀬氏は「クルマの乗り方も知らないあなたにああだこうだと言われたくない」と言い放ち、そこから豊田社長が運転の訓練を始めたのは有名な話。5年後、成瀬氏からの提案でニュル参戦を決めることになる。その成瀬氏は、2010年6月、レクサス『LFA』をテスト中、ニュルブルクリンク付近で事故に遭い亡くなった。自動車メーカーとテストドライバーにはさまざまなエピソードがある。これからスバルのクルマづくりにどんな歴史が刻まれるだろうか。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。