賃上げありきの人手不足解消に限界あり。国も企業もここが正念場

有効求人倍率、バブル経済以来の高水準に

 人手不足が、堅調な企業業績の足かせになりかねない。厚生労働省によると2016年度平均の有効求人倍率は1・39倍と、バブル経済の90年度(1・43倍)以来26年ぶりの高水準。3月単月の同倍率(季節調整値)も1・45倍と、90年11月以来26年4カ月ぶりの高水準だった。人材を確保しようと賃上げが続けば、中小企業をはじめ企業の収益は圧迫される。政府が6月にも策定する新成長戦略でいかに労働生産性を引き上げるか試されている。

 有効求人倍率が高水準なのは、外需に支えられて緩やかな景気回復が続く中、生産年齢人口が減少しているためだ。人手不足の実態を業種別でみると、3月の新規求人数(原数値)の伸び率が高いのは運輸・郵便業(前年同月比12・2%増)、建設業(同11・7%増)、製造業(同11・0%増)、サービス業(同7・7%増)、医療・福祉(同6・8%増)などだった。

 規模別では、中小企業の人手不足が相対的に深刻なようだ。財務省がまとめた全国財務局による賃金動向調査によると、17年度にベースアップ(ベア)を決めた企業割合は大企業、中堅企業が前年度より低下した一方、中小企業は39・2%(前年度は38・2%)に上昇。人材確保に苦しむ中小企業の実態がうかがえる。

 日銀の黒田東彦総裁は、人手不足を背景に今後も賃上げが進み、18年度ごろに2%の物価上昇目標を達成できると自信を示す。だが需給改善に伴う原油価格の上昇、円安による輸入物価高騰への懸念もある中、これに賃上げが加われば企業のコスト負担は拡大する。

 そもそも人材不足は賃上げだけでは抜本的に解消できない。働き方改革や子育て支援、教育改革などを通じて生産性を向上させる必要がある。政府が6月にもまとめる新成長戦略や経済財政運営の基本方針(骨太方針)で、これらの課題にどこまで踏み込むかが当面の焦点となりそうだ。
                 

ファシリテーター・安東泰志氏


 人材不足は生産年齢人口の減少が一因であり、必ずしも政府日銀の政策が成功して景気が急拡大しているからではない。よって、企業にとって賃上げは単純な固定費増になりかねない。賃上げを持続可能にするには、それなりの自律的な経済成長が必須だが、今のところ、安倍政権下でのGDPの僅かな伸びもほぼ財政拡張だけで説明出来てしまうレベルだ。

日刊工業新聞2017年5月1日

櫻井 八重

櫻井 八重
05月01日
この記事のファシリテーター

3月の有効求人倍率は1.45倍。バブル期並みの「売り手市場」が続く中、人手不足は成長戦略を揺るがす深刻な問題だ。大企業が本気になって人を採りにいけばいくほど、中小企業は逼迫する。この記事にあるように、人材不足は賃上げだけでは抜本的に解消できない。働き方改革や子育て支援、教育改革など課題は山積で、企業単体ができる事には限界があるが、国は抜本的な改革を、企業はできる事からコツコツと。どちらか頼みにせず両輪が回りだせば、この窮地を乗り越えられるのではないだろうか。

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