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IoTの祭典、ハノーバーメッセで日本は存在感を示せたか

推進団体「IVI」の活動を高く評価、アジアでも主導権を
IoTの祭典、ハノーバーメッセで日本は存在感を示せたか

会場には最新の技術を見るために大勢の人が詰めかけた

 ハノーバーメッセ2017で人と設備の協調をテーマにした日本のIoT(モノのインターネット)をはじめとする日本の技術が注目されている。独政府が後押しするインダストリー4.0(I4.0)、米インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)が先行する中、メッセでは日本のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI、西岡靖之理事長=法政大学教授)がIICとの連携を発表。日本メーカーもロボットなどを展示し、技術力をアピールした。

【IVI】アジアでも主導権を


 IVIは15年6月に日本機械学会生産システム部門を母体に発足し、トヨタ自動車日立製作所富士通など製造業を中心に200社以上が参加する。欧米のIoT推進団体の追随ではなく、日本の製造業が得意な「人とシステムとの協調と共生」「現場中心のボトムアップ連携」「個を生かすゆるやかな標準(すりあわせ技術)」がコンセプトだ。

 IVIと連携するIICのリチャード・マーク・ソーリーエグゼクティブディレクターは「ユースケースの共有や共同実証実験などで事例の共有からスタートし、次のステップであるアーキテクチャーやテストベットの議論で成果を出すことを期待している」とした。

 24日にはハノーバーメッセ内で西岡理事長が講演。工場の構成要素や標準化のあり方をモデル化した「IVRA(インダストリアル・バリューチェーン・リファレンス・アーキテクチャー)」の説明や16年度の業務シナリオワーキンググループ(WG)を紹介した。
西岡理事長の講演会

 IVRAは国際電気標準会議(IEC)、国際標準化機構(ISO)のジョイントワーキンググループでI4・0のアーキテクチャー「RAMI4・0」と同様に議論される運びだ。

 I4・0の提唱者の1人であるドイツ技術科学アカデミー(アカテック)のヘンニヒ・カガーマン会長(SAP元会長兼最高経営責任者〈CEO〉)は「IVIは日本の製造業の実際的な問題に取り組んでいる。今後I4・0のメンバーとプロジェクトを立ち上げた場合も成果が期待できるだろう」とIVIの活動を評価した。

 西岡理事長は「講演の聴講者が多く、びっくりしている。I4・0の実践が中国を代表するアジアにも移ってきている。欧米との協調だけでなく、アジアの中でもしっかりとイニシアティブを取っていきたい」と手応えを感じた様子。日本発のIoT展開にいっそう力を注ぐ構えだ。

【ファナック】フィールドシステム展示


 ファナックの針木和夫常務理事は「今回の展示の中心にフィールドシステムを置く。フィールドシステムはドイツでも展示を始めている」という。

 フィールドシステムはプリファードネットワークス(PFN、東京都千代田区)や米シスコシステムズなどと共同開発した工場向けIoT基盤で「セキュリティーや通信など専門メーカーなどと協調して今後も進めていきたい」(針木常務理事)とイノベーションを進める。
ファナックの「フィールドシステム」

【オムロン】相手を鍛える卓球ロボ


 オムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」はロボットを相手にした卓球のラリーを通じて機械が人の能力を引き出す「融和」の世界を体現した。

 コーポレートコミュニケーション部の安井一宣アシスタントマネージャーは「対戦相手の能力を認識して、相手の能力より少し高いレベルに設定し、人を育成することもできる」という。
オムロンの卓球ロボ「フォルフェウス」

【コニカミノルタ】作業場 直感的に効率化


 コニカミノルタはIoT戦略の核となる「ワークプレイス ハブ」のソリューションを紹介。カメラなどの製品群とともに、人の作業の検証や配置の設計を効率化する。人が全くいなくなるのではなく、存在するという前提で提案。カメラや画像を用いて直感的なソリューションができる。

【ジェイテクト】メーカー問わず つなぐ


 ジェイテクトは同社が提案する「人が主役のスマートファクトリーづくり」を訴求。青能敏雄技監は「来場者の声から、ドイツの中小企業も日本の中小企業と同じ悩みを抱えていると感じた。

 ドイツの中小企業にも製品が普及できそうだ」と自信を見せる。異なるメーカーの設備をつなげるアドオンタイプのボード型プログラマブルコントローラー「TOYOPUC―Plus」はEtherCATなどに対応していたが、今回PROFINET対応モジュールを追加した。
ジェイテクトの「TOYOPUC―Plus」

【CKD】薬品の梱包・検査 融合


 CKDの出展コンセプトは欧米での認知度向上・ブランド化。「薬品梱包機と検査機を組み合わせた装置は世界的にも珍しい」(中島隆夫広報室長)と話すように、国内トップシェアを誇る薬品梱包機と検査機(フラッシュパトリ)を組み合わせた装置が今回の目玉だ。

 中島広報室長は「主力の空気圧関連機器だけなく、梱包機械など様々な事業をしていることをアピールして他社と差別化を図りたい」と意気込む。
(文=独ハノーバー 鎌田正雄)

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『スマートファクトリーJapan』
 製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。

 また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
【4月下旬来場登録開始】

日刊工業新聞2017年4年28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
IVIはドイツに続き米国のIICとも連携しこの1年、活動は非常に活溌になっている。一方で日本の民間企業をみると、プラットフォームではGEなどにもう勝つことは難しいだろう。プロダクツもFAメーカーなどは世界的に競争力もあるが既存の事業を守る意識が強すぎる。IoTを活用する側であるトヨタをはじめとする自動車産業が、今後のカギを握るだろう。

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