富士通、社内のスポーツ選手が事業開発に協力

選手引退後も、温かく受け入れる土壌

 2年ぶり、2度目の優勝―。富士通は2016年12月にアメリカンフットボールの社会人リーグ「ジャパンエックスボウル」の決勝戦を制した。決戦の場には同社だけでも約1万人の社員が駆け付け、熱狂した。エックスボウルのような頂上決戦では企業スポーツの存在感が際立つ。その一体感は企業スポーツの醍醐味(だいごみ)と言える。

 同社で最も伝統があるのはサッカー部。50年近い歴史があり、現在は「川崎フロンターレ」としてJリーグで活躍している。

 アメフト部は女子バスケットボール部や陸上競技部とともに、80年代前半に同好会から「部」へと昇格した。各部は会社の成長とともに歴史を刻んできた。女子バスケはプロ化の流れに沿って大半が契約選手となり、陸上は午前中が仕事で、午後は練習といった形態となった。

 一方、創部の時からアマチュアリズムを貫くアメフト部は土曜と日曜、水曜が練習日で、週4日はフルタイムで勤務する。仕事量は一般社員と変わらず、繁忙期には練習後に、すぐに仕事に戻ることもある。体を完全に休める日はほぼないが、日本一を目指すことでモチベーションを維持している。

客先で人気者に


 13年入社の金本啓志選手は外食企業担当の営業員。チームでは中堅に位置し、リーダーシップを発揮していく立場にある。仕事と練習の時間配分が難しいが「勤務前日に(課題の)洗い出しや整理を済ませ、効率良く仕事ができるように工夫している」と語る。身長186センチメートルゆえ、客先に初めて訪問すると「見た目で、すぐに覚えてもらえる」と人気者だ。仕事への意識も高く「外食産業向けの新サービスを提案し、世の中に広めたい」と意欲を示す。

 一般に運動部は企業業績が悪化すると波風にさらされる。運動部を担当する竹内弘明シニアマネージャーは「これまでの経営陣が運動部を続ける意思を示してくれたおかげで伝統をつないでこれた」と語る。

 選手やスタッフも日々の練習に加え、さまざまな活動を通じて期待に応える。多摩川の清掃や市民イベントへの参加など、川崎市を中心に社会貢献に尽力。楕円(だえん)の玉を使ったスポーツ「フラッグフットボール」を教えに、小学校の授業に出向くこともある。
社会貢献活動として、アメフト選手が小学校に出向きモノづくり関連の講習を実施

引退後の支援も


 最近では「スポーツ向けソリューションの開発に協力する機会が増えてきた」(常磐真也アメフト部ゼネラルマネージャー)という。選手は、縄跳びにセンサーを付けて運動神経を計るシステムや、選手の健康管理を一元化するクラウドサービスの実験で活躍する。「ビジネスにプラスになるなら、どんどんやりたい」(常磐氏)と力を込める。

 企業スポーツでは引退後のキャリアパスをいかに描くかも問われる。竹内氏は「本人にやる気があれば、温かく受け入れる土壌がある。そこには先輩が築き上げてきた伝統があり、一切ぶれていない」と強調する。運動部で活躍した人から経営幹部が輩出されることを期待している。

日刊工業新聞 2017年4月27日

斉藤 陽一

斉藤 陽一
04月28日
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 弟が大学でアメフト部だったり、私の大学の先生が日大フェニックスの熱狂的サポーターだったりした関係で、15年ほど前、旧・川崎球場によく大学アメフトの試合を見に行きました。その川崎球場は現在、「富士通スタジアム川崎」という多目的球技場に生まれ変わっているそうです。

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