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大阪・泉州11市町の空き家対策で広域連携。全国の成功モデルになるか

行政、宅建協会や銀行など事業案。電力会社や大学にも呼びかけ
大阪・泉州11市町の空き家対策で広域連携。全国の成功モデルになるか

(岸和田市内にある空き家)

 大阪府南部の泉州地域で、岸和田市、和泉市、岬町など7市4町にまたがる空き家対策が動きだした。大阪府宅地建物取引業協会(宅建協会)の泉州支部が市・町の担当者やりそな銀行と協力して五つの事業案を作成。府内の他地域などに広げられる成功事例を作ろうと意気込んでいる。

 「ここ数年、空き家を扱う仕事が増えてきた」。こう話すのは宅建協会泉州支部副支部長を務める笹倉太司エスクリエイト(岸和田市)社長。これまで自社で空き家所有者の相談に応じ、リフォームや賃貸管理などを提案してきた。その中で、「事業者が個別に発信してもなかなか認知されない」という課題も感じていた。

 そこで泉州支部内のプロジェクトチームで空き家対策事業の検討を開始。地域活性化を支援するりそな銀行の協力を得て、市・町の担当者や住宅・不動産事業者などを集めたワークショップを2月から計4回開催した。

 そこで生まれたのが、(1)空き家利用希望者のニーズ収集(2)高齢所有者の啓発活動(3)空き家問題相談所(プラットフォーム)の構築(4)宅建協会と行政を中心とする定例会議の開催(5)7市4町共通のキャッチフレーズを使った情報発信―という五つの事業案だ。

 25日には電力会社、大学、ケーブルテレビ事業者、空き家利用希望者、民間非営利団体など、今後事業に関わってほしい関係者を一堂に集めて事業案の説明会を開く。参加者の意見を聞いて事業案を再検討し、泉州支部で順次事業化していく。市・町には可能な案の施策化を呼びかける。

 総務省によれば2013年時点の日本の空き家は過去最高の820万戸に達し、総住宅数に占める割合も13・5%に高まった。人口減少が続く中、この割合はさらに高まる見通しだ。

 空き家は周辺地域に倒壊、治安・景観の悪化、近隣住宅の価値低下などの問題を招く恐れがあり放置できない。そのため国もこの問題に対応するため「空家等対策の推進に関する特別措置法」を15年に施行している。

 数々の地域活性化プロジェクトに関わってきた藤原明りそな総合研究所リーナルビジネス部長は「市・町をまたぐ空き家対策の取り組みは全国でも珍しい」と話す。今回まとめた五つの事業案も事業者や市・町の関係者と一緒に作成したため、「地域の強みが生きる事業案になった」と自信を見せる。
(文=大阪・錦織承平)
日刊工業新聞2017年4月25日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
個別の市・町とその地域の事業者だけの取り組みでは、活用できる空き家数も少なく、隣接する市・町間で利用希望者や転入者を奪い合うことになる。泉州という広域で共通の事業を展開すれば、空き家数も増え、利用・定住希望者に広く情報発信して泉州外からも人やビジネスチャンスを呼び込める。泉州支部は「成功事例や経験を大阪府などの、さらに広い地域に広げたい」と泉州発の事業化を急ぐ。 (日刊工業新聞大阪支社・錦織承平)

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