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足利の加工メーカーが次世代航空機エンジン「LEAP」の羽根を生産できる理由

自動車部品で培った難削材の加工、それを絶やさない飽くなき人材教育
足利の加工メーカーが次世代航空機エンジン「LEAP」の羽根を生産できる理由

独・ワルターの工具研削盤で切削工具を製作

 AeroEdge(エアロエッジ、栃木県足利市、森西淳社長)は、航空機エンジン大手のフランス・スネクマ向けに次世代航空機エンジン「LEAP」用の低圧タービンブレード(羽根)を生産する。

 現在主流のエンジン「CFM56」の後継機で、2020年にはLEAPに完全移行する見通しだ。このため、17年6月期は16億円の売上高見込みに対し、20年6月期には44億円を見込む。

 LEAPは中型機の欧エアバス「A320neo」や米ボーイング「737MAX」などに搭載されている。森西社長は「世界的に人気の高い機体に搭載するエンジン部品は、需要が高いということ。ビジネスチャンスに恵まれている」と意気込む。

 航空機エンジンの部品加工にはチタンアルミや耐熱材合金など難削材の加工技術が求められる。親会社の菊地歯車(栃木県足利市)は自動車関連部品などで難削材の加工を手がけており、その基盤があった。

 「長い間、難削材の加工に挑戦してきた。そのDNAを受け継ぐわが社にもスキルの高い技術者が多い」と森西社長は語る。

 それらを維持するためには従業員の成長や、より優秀な技術者の確保が求められる。同社では「コストハーフ(半減)」や「サイクルタイムハーフ」など、定期的に製造要員にあえて“難題”を与えて人材を育成する。

 検査部門は非破壊検査の国際基準「NAS410」を持つ人員を増やすため、海外の教育機関への派遣など取り組んでいる。入社試験では優秀な人材確保のため、筆記、面接試験のほか、手腕作業検査盤を使った「手先器用試験」を導入している。

 挑戦する意欲や粘り強さなどをみて特性を把握する。今後は治工具の設置など実現場さながらの試験を取り入れることも視野に入れる。森西社長は「航空機部品の製造は、人命の安全・安心を基本にする仕事。少しの傷も見逃さない素質を持っているかを見極める」と強調する。
LEAPエンジン(CFMインターナショナル提供)

(栃木・前田健斗)
日刊工業新聞2017年4月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
2016年に菊地歯車の航空宇宙事業を分社化して設立した。日本政策投資銀行の出資のほか、地元金融機関から融資を受けるなどしている。技術流出防止の一環で、最終品質に関わる仕上げ加工などの工具はすべて自社で設計・製造する。日本航空が運営する「安全啓発センター」へ全部門が行くよう呼び掛けるなど、従業員の意識向上にも積極的だ。 (日刊工業新聞栃木支局・前田健斗)

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