漆と木を毎日の生活に!異色の7代目が発信し続ける魅惑の輪島塗

輪島キリモト・桐本代表、職人・デザイナー・コーディネーターの顔

 日本を代表する漆器、輪島塗で作った名刺入れがある。輪島の地元材「ヒノキアスナロ」の薄い木の板に塗り重ねた漆は、表面を金属でこすっても傷が付きにくい。使い込むごとに艶が増すビジネスマンにお勧めの一品だ。

 「金属製のカギやスプーンでこすっても大丈夫です」と実演してみせるのは、輪島キリモト(石川県輪島市)の桐本泰一代表。傷が付きにくい理由は以前からあった下地の蒔(まき)地技法を応用した独自の技法を用いているためだ。

 輪島キリモトの特徴は「毎日の生活の中で気兼ねなく使え、現代の空間に合った輪島塗」だ。なだらかな曲線が印象的でダイニングテーブルに置いても合う輪島塗のお椀(わん)「すぎ椀」は初期の代表作。器や小物だけでなく、ヒルトン東京に漆のカウンターを納入するなど、著名なホテルやレストランから漆の特注家具や建築内装も受注している。

 こうした事業展開を可能にした要因が図面提案から木地製作、漆塗りまでを自社で一括生産できる体制を構築したことにある。加えて桐本代表が職人、デザイナー、顧客の意見をコーディネートできる人材だったからだ。
表面を金属でこすっても傷が付きにくい名刺入れ

工業デザインを学び32階建てビルの内装も


 桐本代表は筑波大学で工業デザインを学び1987年コクヨに入社。意匠設計部に配属され、32階建てのビルの内装を担当した経験を持つ。

 だからこそ職人、デザイナー、顧客の思いを調整できる。その思いがこもった製品の全生産工程も自社内でまかなえることが新たな市場開拓につながった。

 桐本代表は会員制交流サイト(SNS)を通じて自社の技術や納入事例を積極的に配信している。このSNSを見た海外のホテルやレストランからも受注を得るようになった。

 現在は東京五輪・パラリンピックに向け改装工事の需要増に沸く国内ホテルからの受注が続いているが、「五輪が終わる20年までに五輪後の準備をしなければならない」と桐本代表は危機感を抱く。

 そのためにもSNSなどを使った海外市場の開拓、若い世代が興味を持つ製品開発を続けていく。

【メモ】輪島漆器商工業協同組合によると、起源は諸説あるが、最古の輪島塗は1524年作とされる。特徴は珪藻土の一種を焼いて粉末にした「輪島地の粉」を漆に混ぜることで下地が頑丈になること。弱くなりがちな部分に布をかぶせる手法「布着せ」も開発され、優美さと堅牢(ろう)さを兼ね備える輪島塗が出来上がった。


※日刊工業新聞では毎週金曜日に「プレミアムクラフト」を連載中

日刊工業新聞2017年4月21「プレミアムクラフト」

明 豊

明 豊
04月23日
この記事のファシリテーター

キリモトは江戸時代後期から明治にかけて輪島漆器の製造販売を営み、昭和の初めに木を刳ることを得意とする「朴木地屋」を創業。桐本さんにはその7代目にあたる。直接お会いしたことはないが、同郷の石川県ということもありかなり以前から存じ上げていた。共通の知人もいる。すでに50歳を超えて挑戦し続ける姿をこれからも注目していきたい。

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