海底の宝探しへ。「しんかい6500」の母船、よこすか乗船記

海洋立国支える有人潜水調査船を徹底解剖


1446回調査


 14日6時30分、目が覚めて甲板に出ると富士山が目の前に大きく広がっていた。駿河湾内で潜航目的地へ向かう支援母船「よこすか」の船内では2時間半後に迫る有人潜水調査船「しんかい6500」の潜航に向けて最終調整が進められていた。

 しんかいはその名前が示すように最大水深6500メートルまで潜航が可能。有人調査船の潜水深度は世界トップクラスだ。全長9・5メートル、幅2・7メートルでコックピットの内径は2メートルの球形の殻となっている。定員は3人でパイロット(船長)、コパイロット(船長補佐)、研究者が乗り込む。

 航海責任者の海洋研究開発機構の海洋工学センターの飯嶋一樹グループリーダー代理は、「船内は狭く決して快適ではない。海洋研究者は海底で標的の生物を見つけるとテンションが上がり船内で講義を始めるよ」と説明する。

 こうした研究者を何度も乗せたしんかいは2016年5月時点で1446回の調査潜航を行ってきた。

 今回、オブザーバーとして乗ることができたのは科学新聞社の黒羽美貴記者(筆者はじゃんけんで負けた)。5年ぶりの報道陣による代表潜航取材に期待がかかる。
㊤着水し潜水の準備を行う「しんかい6500」㊦「しんかい6500」のコックピット

水深1300m


 同日9時、クレーンに吊られたしんかいが海に着水。ボートで近づいたダイバーがしんかいの上部に乗り、手動でクレーンとしんかいを結ぶ結合部を切り離すと、ゆっくりと海に沈んでいく。

 しんかいの潜航には燃料を使わない。鉄板の重り(バラスト)としんかいの重力が船にかかる浮力より大きいため、船は海底に向かって垂直に沈む。海底に到達する少し手前でバラストの半分を海底に捨て、船にかかる重力と浮力を釣り合わせて深海探査を行う。帰路は残りのバラストを捨てて水面に浮上する。

 着水後1時間ほどで水面下約1300メートルの海底に到達。関係者がしんかいからの画像データを「今か今か」と待っていたが、きれいな画像が到着せずイライラが募る。

 しびれを切らした関係者はしんかい内の黒羽記者へ音波による「水中通話機」で会話を試みた。「現場の様子はどう?」と尋ねると、「(プランクトンなどの死骸である)『マリンスノー』で何も見えない」との回答。

 そこで探査地点を変え、再調査に。その後「カニの大群や20センチメートルほどのナマコ、薄い青緑色に見える発光生物などを見た」(黒羽記者)と地上への帰還後に報告している。

海へのロマン


 その後、しんかいは残りのバラストを放出し、水面に到達。4時間半の航行を終え、よこすかに収容されてミッションが終了した。

 黒羽記者は「海底では母なる海に抱かれているような気分で不思議と不安はなかった。正直地上に戻りたくないとさえ思った」とコメント。深海底という別世界に触れられて「うらやましい」と思いつつ、海へのロマンが改めてかき立てられた同行取材だった。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2017年4月18日/19日

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明 豊

明 豊
04月20日
この記事のファシリテーター

誰でも乗船できるわけではないので冨井記者にはとても貴重な体験になったと思う。
海洋には鉱物資源やまだ人間が知らない生物が多くいる。今後探索技術が進めば、エネルギーとして、また創薬や新材料の開発へと大きな弾みとなる。海底の宝探しへ挑戦は続く。

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