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太陽光発電Looopに見る「喜ばれる提案」が環境ベンチャー成功の秘訣

中村社長インタビュー「どうすればお客さまが喜んでお金を払ってくれるのか」
 太陽光発電所の販売事業で、2011年に創業したLooop(ループ、東京都文京区)。新電力や蓄電池販売まで事業を広げ、16年度売上高は200億円を超えた模様。創業時の600倍以上に拡大した。ただ、10キロワット以上の太陽光発電は、17年度から電力会社の買い取り価格が1キロワット時21円とピーク時の半分に下落。中村創一郎社長は「これまでは“練習試合”」と評し、新たな事業を提案する。市場の追い風がやんだ後の成長戦略を中村社長に聞いた。

 ―再生可能エネルギーで発電した電気の固定価格買い取り制度(FIT)が4月に改正され、太陽光発電はコスト削減圧力が強まりました。
 「日本で再生エネの価格は下がりにくい。国内で流通する多くの太陽光パネルは、中国をはじめとする海外で作られている。コストを下げようにも生産国頼りでは難しい」

 ―ループの戦略は。
 「パネル、架台、パワーコンディショナー(電力調整装置)を規格化する。案件ごとに設計して部材を調達していては、コストは下がらない。我々が良い部材を選び、セットにして価格を抑える。遊休地があっても建設に踏み切れない所有者には、土地の一部を顧客が、残りを我々が借りて発電所にするような喜んでもらえる提案をする」

 ―確かに太陽光パネルがあれば売れた時代は終わりました。
 「これまでは練習試合だった。ちょっと商売の勘があれば太陽光発電事業ができた。買い取り価格が21円となり、高校野球で例えると甲子園大会が始まる。これからプロ野球、さらに海外を目指す」

 ―電力販売の契約数は4万件に達しましたね。
 「当社の太陽光発電システムを設置し、電気も当社から購入すれば1キロワット時2円安くなる料金メニューを始めた。先日発売した蓄電池との組み合わせで、さらに安くなるメニューも導入したい」

 ―環境・エネルギーのベンチャー企業は多いですが、事業が軌道に乗るまで時間がかかります。理想だけは成長は難しいですか。
 「お金もうけに徹し、お金もうけに純粋になることだ。どうすればお客さまが喜んでお金を払ってくれるのかを考えればいい。当社は人員を年20%、売上高を年50%ずつ増やすことを目標としてきた。将来の鈍化を考え、社員の求心力となる会社の文化を作りたい」
中村創一郎社長

【記者の目】
 すでにいくつかの新規参入者が、太陽光発電事業の縮小を表明している。異業種が退場すると、専業のループにはチャンス。ただし、中村社長が認めるように、コスト力とアイデア勝負となる。4月入社の新卒社員7人にも、新しいアイデアを考える宿題を出したという。「金もうけ」に徹する社員が育てば、ループの成長も続く。
(文=松木喬)
日刊工業新聞2017年4月17日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
環境ベンチャーて多いですけど、成長している企業はどれだけありますか。Looopは、FITの追い風に乗った成長かもしれませんが、同じようにFITの利益を求めた参入企業で本気で再生エネに取り組む企業はどれだけありますか。理想だけでは成長しません。「ビジネスに純粋」が環境ベンチャー成功の秘訣のようです。

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