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中小企業は地元密着で人材を確保

新卒採用に成功する大阪のモノづくり企業
中小企業は地元密着で人材を確保

伝統工芸の錫製品を製作する大阪錫器の新卒社員

 有効求人倍率が高止まりし、企業にとって採用難が続く。特に中小企業の人手不足は深刻化し、人材の確保が死活問題となっているが、即効薬が見当たらないのも事実だ。そんな中、大阪のモノづくり企業で、地域活動や企業連携などを通じて新卒など若手社員の獲得、定着につなげる成功例が出始めている。

 近畿刃物工業(大阪府守口市)は、段ボール加工用刃物を手がける。社員40人程度だが、新卒を毎年のように採用している。そのカギとなるのが地元との密着だ。高校に継続的に訪問するほか、地元バスケットボールクラブのスポンサーも務める。

 この4月も地元高校から新卒1人を採用した。これまでもバスケットボール部員が入社するなど、事業以外での地域貢献が知名度の向上に功を奏している。「定期的な新卒採用で、若手を教育しようという社員の意識も高まっている」と、阿形清信社長は社内の士気高揚に手応えをつかむ。

 大阪錫器(大阪市東住吉区)は、伝統工芸品の錫器「大阪浪華錫器」を手がける。高校や大学で製造体験を定期的に開き、若者が伝統工芸に関心を持つ機会をつくる。4月には芸術系の大学や専門学校などから新卒3人を採用。社員のほぼ半数が平成生まれで若手が目立つ。「若手が時代のトレンドに合う北欧調デザインなどを提案する」と、今井達昌社長は喜ぶ。

 自動車部品などのブロー成形を手がけるマルイチエクソム(大阪府門真市)は、地域のモノづくり企業ネットワークを通じて人材獲得に取り組んだ。新谷幹夫社長は同ネットワークの人材部会長として地元をけん引する。

 2016年度は会員企業と地元高校の訪問やハローワークでの面接などを実施した。同社では例年、新卒採用は2―3人にとどまるが、今回は高校や大学から7人の採用にこぎ着けた。「部会で研修制度などノウハウを共有し、定着へつなげたい」(新谷社長)と、若手社員の育成も地域で協力しながら進める考えだ。

日刊工業新聞2017年4月12日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
「AIやロボットが雇用を奪うのでは」なんて、最近何かとかまびすしいが、企業の存続、成長に優秀な人材が欠かせないのは古今東西、未来永劫変わらない。若手採用の方法論を持っていること自体、その企業にとってコアコンピタンスに他ならないと思う。

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