東芝メモリ売却交渉。経産省主導の「日米連合」は実現するのか

「こうなっても日本企業が名乗りを上げない…」(経産省幹部)

 東芝の半導体メモリー事業の売却交渉をめぐり、経済産業省などの呼びかけに応じる形で、複数の日本企業が産業革新機構や政策投資銀行などと一部出資する案が浮上した。米国企業と組んで2次入札に参加し、日米連合で中国や台湾、韓国勢に対抗するもようだ。

 経産省幹部は一連の東芝の経営問題について「三つの教訓がある。一つは過去の経営者の失敗。二つ目は1年以上も前から半導体事業を売らねばならない事態が想定できたはずなのに何の用意もしてこなかったこと」といらだちを募らせ「三つ目はこうなっても日本企業が名乗りを上げないことだ」と断じる。

 経産省は東芝の経営危機が表面化して以来、日米連合を軸にフラッシュメモリーの勝ち筋を見いだそうとしてきた。2月には世耕弘成経産相が「フラッシュメモリーははっきり言って韓国が非常に他を引き離してリードをしている。そこに日本、アメリカが追いかけているという状況」と、サムスン電子対抗軸としての日米連合結成について地ならしとも取れる発言をしている。

 さかのぼること数年前、投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が経営危機に陥ったルネサスエレクトロニクスの買収に動いた際、自動車用半導体の安定調達に支障が出かねないと、産業革新機構やトヨタ自動車などの官民連合が実質阻止した。

 今回も似たような構図で、経産省はパソコンやサーバー、スマートフォンなどフラッシュメモリーを活用するメーカーに呼びかけているとみられる。加えて外為法による事前審査の対象にする方針で、巨額の買収資金を用意する台湾・鴻海精密工業などをけん制する姿勢が明確だ。

 当面、フラッシュメモリー市場での下振れリスクは少ないだろう。ただ、出資企業が増えるほど、経営は複雑にならざるを得ない。内憂外患を招かない、明確な成長戦略をステークホルダーで共有できるかが鍵を握る。

経団連「心強く思う」


 東芝が売却を進める半導体メモリーの新会社「東芝メモリ」に、日本の企業連合が出資する構想が動きだした。経団連の榊原定征会長は10日の定例会見で「具体的に経団連が音頭をとる形にはまだ至っていない」としつつも「そうした動きがあることを心強く思う」と歓迎した。

 これまでに富士通と富士フイルムホールディングスが出資を検討していることが明らかになった。今後、名乗りを上げる企業が増えていくか注目される。

 東芝は日立製作所やパナソニック、ソニーなどの日本企業を対象に東芝メモリへの出資の可能性を探ったが、断念した経緯がある。一方、日本の産業界では、メモリー技術の海外流出を懸念する声が強く、今後、日本連合による支援が加速する可能性がある。

ルネサス社長は否定的


 ただ、ルネサスエレクトロニクスの呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)は10日、日刊工業新聞などのインタビューに応じ東芝メモリへの出資について否定した。「検討している事実や打診はない。東芝のメモリーチップは当社のビジネスとのシナジーがない」と述べた。事業会社が東芝メモリに出資するためには、調達の安定化やシナジー創出といった事業メリットが求められるだけに、連合形成まで一定の時間がかかりそうだ。

日刊工業新聞2017年4月11日

明 豊

明 豊
04月11日
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官主導といってもルネサスの時の場合と異なり、日米連合ならマイノリティ出資になる。それで「国策」として対抗できるのか?市場は金あまり、内部留保を多く抱える日本企業もある。どーんと勝負する日本の経営者がいないのは寂しい限り。

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