次世代パワー半導体のウエハーを高効率に切り出す!

ディスコ・レーザ技術部長に聞く「18年には量産の前段階に導入したい」

 電子機器への省エネルギー要求が高まる中、炭化ケイ素(SiC)が電力損失の少ない次世代パワー半導体材料として期待されている。普及への課題は製造コストが高く加工しにくい点だ。ディスコはSiCの塊(インゴッド)から、高効率かつ高精度にウエハーを切り出す加工技術「KABRA(カブラ)」を開発した。同技術はSiC市場を切り開く一手となるか。技術開発本部の大宮直樹レーザ技術部長に聞いた。

 ―カブラとは。
 「SiCインゴッド表面にレーザーを照射して切断層を作製し、厚さ0・1ミリ―1ミリメートルのウエハーを切り出す技術だ。切断時の素材ロスがなく、切断層は平たんなため表面を整えるラップ研削工程を省ける。加えて一つのインゴッドあたり従来2―3日かかっていた加工時間を、18時間に短縮できる。加工コストを4分の1―半分に、生産性をおよそ4倍に高められる」

 ―実用化および商談状況はいかがですか。
 「引き合いは多く商談も進み始めている。新しい加工法の積極的な顧客への認知と採用してもらうのが第一段階だ。2018年には量産の前段階に導入したい。一般的に使われるようになるのは、さらにその先だ」

 ―SiCの市場成長を後押ししそうです。
 「速く、安くウエハーを生産できるようになるため、貢献するのは間違いない。一部のプロセスは置き換わるだろう。ただ次世代半導体の主役は、当面シリコンだと見ている」

 ―顧客の要求に変化はありますか。
 「半導体チップをより速く、より小さく加工したいという要求は変わらないが、高性能を求めるケースが増えている。つまり半導体を使う際の故障を防ぐため、ウエハー加工段階の不具合もなくさなければいけない。ウエハーロスと不具合をゼロにするのが究極の目標だ」

 ―IoT(モノのインターネット)などで、半導体市場は右肩上がりとの予測もあります。トップシェア維持に必要なことは。
 「『切る、削る、磨く』技術の進化はもちろん、顧客のニーズだけでなく自ら技術や発想を打ち出すことが重要だ。技術者が積極的に挑戦する風土をつくることが、市場を切り開く1番の軸だ」
大宮直樹氏

(聞き手=政年佐貴恵)

日刊工業新聞2017年4月11日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
04月11日
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SiCの高コストの原因は、インゴッドの段階での歩留まりの低さと加工の難しさにある。その片方の解決につながる加工技術は、SiCパワー半導体の実用化や普及の強力な後押しになる。ディスコは「切る、削る、磨く」に特化することによって、業界で独自の地位を築いた。その方針はぶれない。半導体技術の進歩に伴って、将来はさまざまな新材料が実用化されていくだろう。常に時代の先を行く技術を生み出していく力が問われそうだ。

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