倉庫火災の衝撃。大型化?分散?新しい配送の仕組みを有利にするのは…

「法人と個人を半々に取り扱う物流センターがあれば」(アスクル社長)

 ネット通販大手アスクルの大型物流倉庫火災は、物流業界に大きな衝撃を与えた。インターネット通販の急速な普及や、企業物流を包括的に受託するサードパーティー・ロジスティクス(3PL)の拡大で、先進的な大型物流施設の需要は高まっている。一方で、大型・集約化が進めば1カ所のトラブルが致命傷となる。アスクルの火災は現代の物流の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにした。

 「今後取り組むべき防火対策、消火活動のあり方について検討していただきたい」。3月14日に消防庁と国土交通省が開いたアスクルの倉庫火災を受けた防火対策の有識者検討会。火災を教訓に対策の検討が始まった。

 1979年以降、1万平方メートル以上の倉庫火災はアスクルの火災を含めて6件。鎮火までの最長時間はこれまで45時間だったが、アスクルの火災は296時間と桁違いに時間がかかった。焼損面積は倉庫全体の6割にあたる約4万5000平方メートル。この倉庫の物流機能は完全に停止した。

 火災事故の損失額は合計で101億4500万円の見通し。個人向けネット通販「ロハコ」の中核拠点で東日本エリアを対象に7万品目を扱っていただけに、販売にも影響が出ている。当面続く配送遅延については「複数の臨時センターを早急に立ち上げ、6カ月後の復旧を目指す」(玉井継尋アスクル執行役員)考えだ。

 ネット通販拡大で需要が高まる大型物流施設は、不動産会社にとって新たな金脈だ。三井不動産は12年、GLプロパティーズ(東京都港区)と組んだ「GLP・MFLP市川塩浜」(千葉県市川市)の開発を皮切りに、物流施設事業へ本格参入した。事業開始からの累計投資額は約3000億円。今後も年間3―4件を目安に開発・供給を予定する。

 三菱地所は3月末、単独開発として2件目となる「ロジクロス厚木」(神奈川県厚木市)を完成。現在も複数のプロジェクトが進行中で、年間2―4件の施設開発を継続する。

 アスクルの火災以降も、こうした動きは止まることはない。ただ、三菱地所は自社の物流倉庫について、消防とも相談しながら安全対策を進める。入居企業と緊密に連携し、防火への啓発活動にも改めて取り組む。

 火災が起きたアスクルの物流倉庫はロハコの全体取り扱い量の6割を占めていた。アスクルは今後、埼玉や東京の計5カ所に賃借する代替物流倉庫で、ロハコの取り扱いを分散させる。「関東にもう一拠点、法人向けと個人向けを半々に取り扱う物流センターがあれば良かった」(岩田彰一郎社長)という反省からだ。

 消防庁は現在、構造と消火活動の両面からアスクルの火災が大規模化した原因を究明中。結果次第では新たな物流施設のリスク対策が必要になりそうだ。
(文=山下絵梨、村山茂樹、斎藤正人)

日刊工業新聞2017年4月7日

土田 智憲

土田 智憲
04月11日
この記事のファシリテーター

倉庫を大型化すれば、多くのものを一度にピッキングでき、1つに梱包することができて効率が良くなる。しかし事故リスクが高まる。倉庫を分散させれば、事故リスクは軽減でき、また拡張・縮小などに柔軟に対応できるようになるが、小口に発送することになり、それこそ配送に大きな負担がかかる。包装資材も大量に使うことになるだろう。新しい配送の仕組みが有利にしていくのはどちらの仕組みだろうか。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。