最先端3Dプリンター技術で作る航空機エンジンのタービンブレード

イタリア・カーメリで、「最高に自由度の高い製造法」が見れる

 この数年、世界を代表するエンジニアや経営者たちがひっきりなしにイタリアのピエモンテ州にあるカーメリを訪れている。カーメリはどこまでも続いていそうな平らで肥沃な平野に位置し、国を代表する工業都市ミラノと、トリノの間に挟まれたとても小さな街。

 街で一番にぎわっている場所といえば、12人も集まればすぐにいっぱいになってしまうピッツァリア(ピザ専門のレストラン)ぐらいだ。

 3年前、このカーメリに、GEアビエーションの傘下にあるアビオ・アエロはヨーロッパ最先端といえる3Dプリンター工場を建て、操業を開始した。

 以来、世界中から「未来のものづくりを見たい」という訪問者が後を絶たない。GEアビエーションの社長兼CEOであるデイビッド・ジョイス氏も、「この工場に来れば、3Dプリンターがどんな可能性を秘めているか理解できるでしょう。ここには最先端が詰まっています」と話す。


 アディティブ・テクノロジー、いわゆる3Dプリンターの技術は、インターネットが情報やショッピングの仕方を全く新しいものにしたように、ものづくりの現場に革命を起こしている。

 アディティブ・テクノロジーでは、原料の層を重ねては溶かすを繰り返し、下から上へ立体的に造形して部品を作る。エンジニアはコンピューター上で部品をデザインし、その図面を3Dプリンターに送る。プリンターは送られてきたデザインのファイルを分解して一つひとつの層に置き換え、適切なパターンで各層をつなぐ。

 「どんなに複雑な形状でも、作れます。お望みなら中が空洞になった構造でも、骨のような形でも」とカーメリにある工場で製造エンジニアを務めるダリオ・マンテガッツア氏は自信を示す。
伊ピエモンテ州カーメリにある3Dプリンター工場 (写真:アビオ・アエロ)

 GEアビエーションは、昨年、レーザービーム方式の3Dプリンター機械メーカーであるコンセプトレーザー社を買収したほか、電子ビームを使う3Dプリンター機械メーカー大手であるアーカム社の76%の株式を取得した。

 これにより、それぞれの本社があるドイツとスウェーデンにも拠点を拡大させた。米国にも、アディティブ・マニュファクチャリングの先駆者的存在であるモリス・テクノロジーの本拠地シンシナティや、3Dプリンター製造の工場があるアラバマ州オーバーンなどに拠点がある。

 ただ、GEアビエーションCEOのジョイス氏は、「イタリアとアビオ・アエロは、GEアビエーションのアディティブ・エコシステムが成長するうえで中心的な役割を持つことになるでしょう」とし、カーメリがGEのアディティブ・マニュファクチャリング戦略を語るうえで重要な拠点であるとの見解を示す。

 GEとサフランの合弁企業、CFMインターナショナル製の商業用エンジン「LEAP」が搭載している燃料ノズルは3Dプリンターの技術を使って出来ている。これは、いわゆるレーザー方式の機械を用いて強力なレーザーにより金属微粉末を何層にも溶融させて作っている。ちなみに、一層の厚みは20から80ミクロンと人の髪の毛よりも薄く、1250層も重ねてようやく1インチの積層材料になる。
3Dプリンターで作られた燃料ノズルはLEAPエンジンに搭載

 一方、カーメリの工場では、アーカム社製の電子ビーム方式の機械を使っている。これを使うことで、レーザー方式より4倍も厚く、さらには数倍の強度を持った部品を製造することができるほか、ニッケル合金の半分の軽さであるチタンアルミの積層造形も可能になっている。

 カーメリの工場では、このような機械20台ほどを使って、2020年にも商業運転を開始する予定の次世代航空機ボーイングB777X用エンジンであるGE9Xに搭載される低圧タービンブレードの後段を積層造形している。

 先述のカーメリの工場で働くマンテガッツア氏は、電子ビーム方式で作った積層造形のことを「最高に自由度の高い製造法」と表現する。なぜなら、部品の形状を変更することもできるし、一つの機械で同時にさまざまな部品を製造することもできるからだ。

 GE9Xの低圧タービンは6段のブレードから成り立っているが、前段のタービンは日本のIHIが担当している。それ以外にも、IHIは、低圧タービンのモジュールである、ディスクやコーンシャフト、軸受けなどを製造しており、これらはアビオ・アエロの工場に送られ、そこで組み立てられている。


GE Reports Japan

明 豊

明 豊
04月09日
この記事のファシリテーター

 日本の中堅・中小企業でも3Dプリンターの活用が広がっている。紹介した企業はコイワイ(神奈川県小田原市)。3Dプリンターを活用した積層砂型工法と金属粉末積層工法を不特定多数の顧客に提供した国内初のサービスビューロー。船舶エンジンのマニホールドや自動車エンジン用ターボチャージャーの試作開発を手がけている。
 同社は2007年に3Dプリンターによる積層砂型工法の研究を開始。それ以前は自動車向け鋳物部品を試作していたが、顧客の求める高精度・高速のニーズに対応できず悩んでいた。若手人材も不足しており、「モノづくり革新と人材確保を満たすのが3Dプリンターだった」と小岩井社長は話す。
 08年から砂型による試作提供を開始したが、当初は「3Dプリンターの砂型は採用できない」と理解が得られなかった。機械的性質の調査や従来製品と遜色ない品質証明などを一つ一つ検証していった。3Dプリンターは木型をつくる工程を省くため短納期の試作が可能で、従来工法の3分の1―10分の1の価格で製作でき、顧客の評価も徐々に向上。12年には3次元データからダイレクトに金属部品をつくる金属粉末積層工法を開始し、より複雑な形状の部品を短時間で試作できるようになった。
 小岩井社長は「鋳物と金属積層プリンター製品は全くの別物。砂型の進化形が金属積層ではない」という。金属粉末ではチタンやコバルトクロムなどの硬い金属で、1ミリメートル以下の細くメッシュ形状などの精密な試作に対応できる。一方、砂型ではより大型製品が製作でき、少量の量産も可能だ。
 コイワイは経済産業省などが主導し、国産の金属3Dプリンターの完成を目指す次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)のユーザー代表企業を務める。「国産のプリンターができればより早く安価にできる」と小岩井社長は期待する。

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