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タカタ、追加取り替え費用で合意できなければ再建策破談も

「最終的な結論を得るまでに数カ月はかからない」(車メーカー幹部)
 タカタが大口債権者の自動車メーカーと3月末をめどに合意を目指している再建策の取りまとめが4月中旬以降にずれ込む見通しとなった。大半の車メーカーは法的整理による再建を求めるスポンサー候補の提案を支持しているとされ、タカタは私的整理を主張している。車メーカー幹部は車各社が債権者だけで裁判所に申し立てることを含めて法的整理を主張するが、「タカタが受け入れるかは予断を許さない」との見通しを示している。

 車メーカーの大半は、シートベルトなどタカタの健全な事業だけを切り離して新会社に移し、スポンサー候補で中国企業傘下の米キー・セイフティー・システムズ(KSS)の出資を受けて再建する。残った旧会社は、法的整理によりリコール(回収・無償修理)費用や訴訟費用などの債務問題に対応する会社分割案を支持しているという。

 法的整理を求める理由の一つとして、車メーカー幹部は「今後の訴訟などを踏まえると債務が膨らむ可能性があり、リスクが高い」。裁判所が関与する法的整理で透明性を確保しながら、訴訟費用などの潜在的な債務に対応したいとの考えを示している。

態度に変化


 タカタ、車メーカー、KSSなど関係者は3月中の再建策の取りまとめを目指していたが、「4月中旬に会合を開き、仕切り直すことになった」(車メーカー幹部)という。その理由について別の車メーカー幹部は、「KSSと車メーカー間で補償などの条件を詰めるプロセスを踏んでいるのではないか」とし、私的か法的かの整理手法だけでなく、再建後の対応を話し合うため延びているとの見方を示す。

 タカタの対応についても「公言はしていないが、タカタは法的整理の覚悟を決めていると思う」とし、これまでかたくなに私的整理を主張してきた態度に変化がみられると指摘する。

 またこれまで意見をまとめるのが難しいとされてきた車各社の対応では、「大多数が法的整理を望むが、一枚岩ではない」。別の車メーカー幹部は「海外メーカーの一部で主張に違いがあるかもしれないが、大半はまとまっている」とし、意見が集約されつつあるとの見方を示す。

 再建策の取りまとめは年度をまたぐ可能性が高まるが、「最終的な結論を得るまでに数カ月はかからない」(車メーカー幹部)との指摘もある。長く不透明感が続いた再建問題で、関係者が近くどのような結論を下すのか予断を許さない状況が続きそうだ。
日刊工業新聞2017年3月28日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
年度内の決着が見送られ、再度の仕切り直しとなった。本文中にあるように、私的と法的の手続き上の意見相違ではなく、債務の細部に関してメーカーとスポンサーが条件を詰めるプロセスを踏んでいるのであれば、あと1-2ヶ月程度で合意に達する可能性が高い。鍵を握るのはいうまでもなく、宙に浮いた乾燥剤付き硝酸アンモニウム製インフレーターで、取り替え費用は7000億円以上は追加でかかると見られる。しかし、ここで合意に達せない場合、再建策は破談のリスクもある。タカタ、スポンサー、自動車会社共に最後の歩み寄りに最大限の努力が必要な局面と言える。

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