東レがスエードの人工皮革で攻勢に出る理由

生産能力倍増へ。天然皮革は原皮の価格変動が激しく慢性的な供給不足

 東レはスエード調の人工皮革「アルカンターラ」の生産能力を今後5年内をめどに倍増する。約3億ユーロ(約350億円)を投じてイタリア子会社の生産設備を段階的に増強し、今の年900万平方メートルから同1800万平方メートルに引き上げる。欧州市場を中心に自動車需要の拡大に対応する。設備導入は需要を見ながら進める予定。

 アルカンターラは高級人工皮革として、自動車内装材にとどまらず、家具、インテリア、建材装飾品などに使われる。近年は家電にも採用が広がり、増産が必要だと判断した。

日刊工業新聞2017年3月20日



トヨタ「クラウン」に初採用


 東レは29日、スエード調の人工皮革「ウルトラスエード」がトヨタ自動車が同日発売した「クラウンアスリート J―FRONTIER」のシートとヘッドレストに採用されたと発表した。滑らかで上質な手触りに加え、深みのある独特な色合いを表現したことが評価された。東レのスエード調人工皮革がクラウンに使われるのは初めて。

 ウルトラスエードは東レが持つ超極細繊維の製造・加工技術を活用し、1970年に開発した人工皮革。ファッション業界のほかインテリアや雑貨、自動車の内装用途などに普及している。

 J―FRONTIERはトヨタ店創立70周年を記念して企画された特別仕様車。

日刊工業新聞2016年8月30日

峯岸 研一

峯岸 研一
03月22日
この記事のファシリテーター

 日系メーカーが生産する人工皮革は、マイクロファイバーをベースにした不織布です。人工皮革には二タイプあります。靴、鞄やランドセル、球技用ボールに使われる銀面タイプ(本革タイプ)と、カーシート、椅子張り、インテリア、衣料に使われるスエードタイプです。現在、日系メーカーで人工皮革を生産するのは合繊メーカー四社、二社がスエードタイプ、二社が銀面タイプを得意にしています。しかも、四社とも基材であるマイクロファイバーから加工までを一貫生産、その中でも東レグループはスエードタイプに強く、スエードタイプで日系メーカー最大の生産能力があります。
 今回のアラカンターラ社の増設は、マイクロファイバー使いのスエードタイプの風合いや触感、メンテナンスの良さなどから、欧州や米国で中高級車のカーシート向けに需要が拡大しているのが主な要因です。先頃、旭化成グループが増能力に踏み切ったのも同じです。勿論、カーシートは天然皮革へのニーズが根強いのですが、原皮の価格変動が激しく、慢性的な供給不足が続いているため、代替材として人工皮革を採用する車種が増えています。世界で人工皮革の生産能力は中国が普通糸タイプを中心に圧倒的です。しかし、日系人工皮革メーカーは量的劣位にありながら、品質要求の厳しいアイテムで品質優位性を活かし事業展開しています。その代表がカーシート向けです。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。