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丸の内の大家さん、今度は物流施設の大家さんに

三菱地所、2020年までに最大20件を開発
丸の内の大家さん、今度は物流施設の大家さんに

三菱地所の最新物流施設「ロジクロス厚木」(イメージ)

 三菱地所が物流施設の展開を加速している。3月には単独開発として2件目となる「ロジクロス厚木」(神奈川県厚木市)が完成する。今夏には神戸市でも、最新の物流施設の完成を予定する。このほか着工済みの案件や用地確保済みの案件を含め、複数のプロジェクトが進行中だ。同社は電子商取引(EC)の急速な普及などを背景とするマーケットの拡大を追い風に、2020年度までに10―20件の開発を目指す。

 物流施設は比較的中長期の契約でテナントが入居するほか、管理費や賃料のボラティリティー(変動性)が低く、保有リスクが小さい。需要の面は、大量供給の余波で一時的に需給バランスが崩れる懸念はあるものの、三菱地所は「実需はまだまだ旺盛。

 中長期ではマーケットの縮小はない」(竹田徹物流施設事業部長)と見る。事業の多角化という点でも、拡大の意味は大きい。同社にとって物流施設は新しい事業領域で「積極的に投資していく」(同)考えだ。

 同社は13年4月に物流施設事業部を立ち上げ、物流施設の開発を本格的にスタートさせた。現在の事業部の在籍者は27人。立ち上げ当初に比べて3倍に増えた。16年には事業部内に施設建設のコストや品質などをチェックするチームを新たに設け、陣容に厚みを増している。

 16年に子会社化した東京流通センター(東京都大田区)との人員交流により、ノウハウの習得も進めている。東京流通センターは17年に設立50周年を迎える業界の老舗で、施設の運営・管理やテナントとの関係構築などに豊富なノウハウを持つ。一方では東京流通センターもテナント誘致に三菱地所のマンション分譲の手法を取り入れるなど、シナジー創出を進めている。

 三菱地所は今後、安定的な成長を目指し、年間2―4件の施設開発を進める。資産構成の過半は首都圏に置き、関西圏と中部圏を加えた三大都市圏を事業エリアの中心に据える。施設は自社保有と他社への売却の両面で、事業を拡大していく。

 保有・売却のいずれの手法を取る場合でも、運営・管理は自社で担う。「テナントとのつながりを深めることで、事業をパワーアップできる」(同)ことがその理由だ。

 ニーズを高い水準で把握することで、テナント誘致や仲介といったリーシングだけでなく、土地の取得や施設開発のノウハウ蓄積につなげる。
日刊工業新聞2017年3月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
物流施設内で働くテナントの従業員の確保を支援するため、今後は共用部もより充実させていく。 (日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤正人)

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