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鴻海・シャープ連合、「打倒サムスン」鮮明に

「IGZO」液晶の供給停止、自社製品への搭載優先
鴻海・シャープ連合、「打倒サムスン」鮮明に

シャープ社長・戴正呉氏

 シャープは低消費電力を特徴とする「IGZO(酸化物半導体)」液晶パネルの事業戦略を転換する。従来は外部へ広く販売する戦略を採用してきたが、今後はスマートフォンや高解像度の「8K」ディスプレー、車載用などの差別化技術として囲い込み、外販しない方針。戴正呉(たいせいご)社長が14日、明らかにした。すでにテレビ用パネルについては韓国サムスン電子などへの供給を停止しており、台湾・鴻海精密工業グループとして競合他社に対抗する戦略がより鮮明になってきた。

 シャープはIGZO液晶パネルの量産で他社に先行している。中国スマホメーカーなどに提案してきたが、複数社から購買できないことなどがネックとなり、採用が広がっていなかった。これに対して戴社長は「他社にIGZO技術はない。シャープのアドバンテージだ。他社に供給するつもりはない」と述べ、自社製品だけの強みとして活用する方針に転換した。

 シャープは中国・CECパンダにIGZOパネルの技術を供与し、南京でIGZOパネルの生産を始めている。今後は2017年度に進める海外事業の構造改革の中で、CECパンダとの提携関係も再検討する。

 一方、テレビ事業の世界戦略については、サムスンなど競合への対抗姿勢を鮮明にするため「(米国で他社ブランドのテレビを販売する)可能性はある」(戴社長)との考えを示した。米国のブランドライセンスを譲渡した中国・ハイセンスとの交渉が進んでおらず、契約期限の20年までブランドを買い戻せない公算が大きいためとみられる。

シャープ社長「テレビ世界販売、800万台超へ」


 ―2018年度のテレビ販売目標1000万台に向けた生産戦略は。
 「欧州は(買収した)UMCのポーランド工場、鴻海精密工業のスロバキア工場が活用できる。中国は南京工場で、東南アジアではマレーシア、インドネシア、フィリピンの工場で作り、米国へも輸出できる。17年度は世界販売800万台以上を必ず達成する」

 ―テレビ用パネルの調達は。
 「堺ディスプレイプロダクトと(シャープの)亀山第2工場から調達する。鴻海グループのイノラックスからの調達も考える。1000万台分には問題はない」

 ―「IGZO」パネルの今後の戦略は。
 「他社にはIGZOの技術はない。外部に採用してもらわなくても問題ない。自社で使い、他社に供給しない」

 ―提携関係にあるCECパンダからのパネル調達は。
 「17年度から海外の構造改革に着手する。契約内容を確認し条件が合えば調達する」

 ―16年度通期の当期損益の黒字化は可能ですか。
 「通期は難しい。通期黒字化は17年度以降になる。東証1部上場(への復帰)は17年中に目指す」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
もともと鴻海のテリー・ゴー会長はサムスン嫌いで有名。しかも今は叩く絶好のチャンス。ただあまり自社製品にこだわり過ぎるとデバイスの競争力が付かない。

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