ソフトバンクが社員に起業させる理由。30年間でグループ5000社へ

新事業提案を促進、厳しく審査

 ソフトバンクグループの新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」が軌道に乗り始めた。制度開始6年目の2016年には、同制度が目標とする新規事業の法人化について2件が実現した。同社は10年に、今後30年でグループ会社を5000社に増やす成長指針を掲げている。華々しいM&A(合併・買収)が目立つ同社だが、社員からの提案を通じて事業会社を生み出しグループの拡大を狙う。

経営者として『人・モノ・金』の管理を経験


 ソフトバンクイノベンチャーの目的は、社員の提案による新規事業の創出にとどまらない。提案者による推進体制の下での法人化を重視する。その理由についてソフトバンク人事本部採用・人材開発統括部人材開発部の杉原倫子部長は「提案者は起業し、経営者として『人・モノ・金』の管理を経験してもらう。それが経営人材の育成につながる」と説明する。

 新規事業提案制度は11年に立ち上げた。12年にはSBイノベンチャー(東京都港区)を設立し、提案の事業化検討や意思決定を速める体制を整えた。提案の事業化は独自性や、ターゲットとする市場の成長見通しなどを基に判断する。
 
 これまでの応募総数約6100件のうち、事業化した案件は12件。全体の0・2%にとどまる。ただ、制度を継続してきたことで「提案内容が洗練されてきた。個人のアイデアベースではなく、企画や技術など複数の社員がチームを組んで提案する案件が増加し、最終選考に残る件数が増えた」(杉原部長)という。その中で16年は新たに2件が法人化された。

 16年に法人化した一つがhugmo(ハグモー、東京都港区)だ。保育業界向けに情報通信技術(ICT)サービスを展開する。園児の活動内容などの情報を保育士が配信し、保護者がスマートフォンで確認できるアプリケーション(応用ソフト)などを提供する。

まずは大きな成功モデルを


 同社の湯浅重数社長兼最高経営責任者(CEO)はイノベンチャー制度について「審査は非常に厳しいが、社員にとっては(起業を)挑戦できる良い制度。事業化となればソフトバンクグループと連携できる点も大きい」と指摘する。

 イノベンチャー制度について経営層からは社員育成の一環として評価の声が上がる一方で「ソフトバンクグループに対する事業貢献という意味ではまだまだ」といった厳しい指摘がある。このため杉原部長は「事業貢献の面で、まずは大きな成功モデルを一つ提示したい」と意気込む。

 16年には、起業を目指す社員が情報共有したり、研修を受けたりできる場を開設。事業提案をより洗練できる環境を整えた。今後、ソフトバンクグループの中で存在感を示す企業が生まれるか注目される。
 

(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年3月16日

昆 梓紗

昆 梓紗
03月16日
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チームでの応募がレベルアップにつながっているということなので、異なる部署と交流できるような機会や、社内ハッカソンなんかも面白いかもしれません。

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