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スバルに売れすぎリスク

主力の米国市場、在庫適正化に目を光らせる
スバルに売れすぎリスク

昨年11月から米国で生産を始めた新型「インプレッサ」と吉永社長

 「これがスバルの販売店?と目を疑うくらい立派な建物だった」。北米営業を担当する執行役員の早田文昭は苦笑いする。富士重工業にとって未開拓地区だった米国南部の有力ディーラーがスバル車のディーラー権を獲得。ここ5年ほどで真新しい販売店がいくつもできた。

 スバル車は米国で16年に9年連続で前年販売を上回った。商品、マーケティング、販売戦略がうまくかみ合いスバルブランドは全米に浸透。従前から販売シェアが高い米北部だけでなく南部でもシェアを伸ばした。「全米ディーラーは約620店舗とここ数年同じだが顔ぶれは変わった」(早田)。スバル車はもうかる―。米国ディーラーの共通認識だ。

 「販売台数は未達で全然かまわない。在庫が増えすぎるほうが怖い」。スバル車の米国販売が大きく伸びる中、富士重社長の吉永泰之はスバル車の在庫動向に神経をとがらせる。

 スバル車はここ数年の急激な販売拡大により、在庫が極端に少ない状況が続いた。車の値引きに相当するインセンティブ(販売奨励金)は業界平均を大きく下回る。中古車の下取り価格も高く、スバル車の需要を喚起し、高い利益率となる好循環を生んでいる。

 極端な車の玉不足は販売機会の損失につながるため、米国工場では16年春から18年度にかけて能力増強を進めている。ただ車を作りすぎて在庫が増えると次第に奨励金で台数をさばくようになる。富士重が強みとしてきた従来のビジネスモデルが崩れる恐れがある。

 在庫を余分に持っていないか―。米国販売会社スバルオブアメリカは米国ディーラーの現場に目を光らせる。米国市場はガソリン安の影響でセダン系車種からスポーツ多目的車(SUV)、ライトトラックに人気がシフト。新型「XV」の投入も控え、SUVの販売比率が高い富士重にとって追い風が続く。“売りたい”ディーラーをマネジメントし在庫適正化を維持できるか。売れすぎリスクとのにらみ合いが続く。
(敬称略)
                


日刊工業新聞では「挑戦する企業 富士重工業編」を連載中
日刊工業新聞2017年3月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨年後半ごろ、吉永泰之社長は「(米市場の)全需はピークアウトしたと思うが、スバル車は車そのものが評価されており全需に支えられて販売を伸ばしてきたわけではない。生産増強する中で従来のビジネスモデルが崩れないよう(生産、販売戦略の)かじ取りが大事だ」と話していた。今の状況をコントロールできればリスクは少ないと思うが。

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