一生を賭ける仕事の見つけ方。「人生で重要な価値観を二つのキーワードに落とし込む」

トーマツベンチャーサポート・斎藤祐馬氏に聞く。「私は笑顔と挑戦」

 ―誰もが「どんな仕事に人生を賭ければいいのか分からない」と悩みます。これに対し「キャリア志向ではなくミッション志向を」と提唱しています。
 「世の中にはスキルやキャリアを高める方法があふれ、特に大企業に勤めていると出世や給料が関心事になる。だが、そればかりを追い求める仕事は、自分よりスキルの高い人や人工知能(AI)に代替される可能性がある。しかも誰かが定めた基準による相対評価のもとで働く人生だ」

 「一方で自分のミッションを歩む人生は、誰にも代替されない。周囲から理解されない苦しみを伴い、相応の覚悟も必要だが、やりたいことが形になっていくのを見るのは何にも代えがたい喜びがある。食うために稼ぐ“ライスワーク”とは違い、一生を賭けられる“ライフワーク”が得られる」

 ―斎藤さんは早くから自分のミッションを意識したそうですね。
 「中学2年の時に父親が脱サラして起業した。事業を軌道に乗せるのに苦労する姿を見て、起業家を支援する人がいればいいのにと漠然と思った」

 「高校1年でさまざまな職業を調べ、公認会計士になって経営者の参謀になるという目標を見つけられた。ただ試験に3度失敗して地獄のような苦しみを味わった。トーマツ入社後も自分が本当にやりたい起業直後のベンチャー支援ではなく、大企業の監査や上場目前のベンチャー支援に時間を割かざるを得なかった」

 ―自分のミッションをどう見つければいいのですか。
 「まず自身の原体験を自覚する。過去に重要だったと感じる出来事を曲線グラフ化(感情曲線)し、自分の人生の“山と谷”を視覚で捉える。次になぜその体験が重要な意味を持つのか言葉で探り、自分の人生で重要な価値観を二つのキーワードに落とし込む」

 「私の場合は“笑顔”と“挑戦”だし、ある後輩は“人とのつながり”“知識欲”だ。この原体験と価値観を基に、自分が何を達成できると喜びを感じられるかを見極めたものがミッションとなる」

 ―簡単に見つけられません。
 「自分は誰の笑顔を見たいか考えてみてはどうか。ミッションは仮決めでもいいし、強烈な原体験がなくても、個人から会社、業界、社会へと視点を高めていくと見つかりやすい。さらに他人に語れば語るほど成長する。できれば100人には話してほしい」

 ―ミッションを歩む人生は起業と同様に「Jカーブ」の谷に直面すると書いています。
 「起業直後に利益を出せるのは極めてまれだ。生みの苦しみの期間を耐え忍ぶ時期が続く。その期間を凌(しの)ぎ、浮上に転じたベンチャーだけが成長のスタートラインに立てる。この時期を乗り越えるカギが、マインド、ビジネスモデル、ネットワークの3要素だ」

 ―執筆の狙いは。
 「日本を挑戦する人であふれる社会にしたい。自分のミッションのために突っ走るような人材を増やし、ベンチャーと大企業の塀の上を走って行くような生き方を提案したい。そうすることで日本は面白くなってくると信じる」
(聞き手=茂木朝日)

【略歴】斎藤祐馬(さいとう・ゆうま)05年(平17)慶大経卒。06年に4度目の挑戦で公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツ入社。10年に休眠状態だったトーマツベンチャーサポートの再始動に参画。起業家と大企業、ベンチャーキャピタルと出会いの場を提供する「モーニングピッチ」を13年4月に始め、プレゼンイベントを“起業家の登竜門”と呼ばれるまでに育て上げた。愛媛県出身、34歳。『一生を賭ける仕事の見つけ方』(ダイヤモンド社)


日刊工業新聞2017年3月13日「著者登場」

明 豊

明 豊
03月13日
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斎藤さんとの付き合いはかれこれ6年ぐらいになる。最初に会ったのはトーマツベンチャーサポート(TVS)を立ち上げたばかりの頃だった。実は斎藤さんが公式で初めてモデレーターを務めたのはうちのイベントだった。「他人に語れば語るほど成長する」とインタビューで話しているが、まさにこの6年間、彼はそれを実践してきた。TVSの初期からメディアを使うことがとても上手だと感じていたが、今は彼自身がメディアになっている。

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関口 巽
関口 巽
03月13日
「ミッション」とは何なのか。目標なのか? 目的なのか?
「ミッション」の定義がわからないから、話の内容が入ってこない。
  

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