集団感染リスクを減らせ!人がいる空間でも24時間殺菌を可能に

【連載】挑戦する地方ベンチャーNo.15 エネフォレスト

 今年の冬もインフルエンザが流行した。有効な感染対策が分からず、被害が拡大してしまった現場も多いだろう。工場などで多くの従業員をかかえる企業や体力のない高齢者や乳幼児のいる施設などでは毎年の流行に頭を悩ませている職員も多い。

紫外線で空気感染リスクを減らす


 大分県に本社を置くエネフォレストは、インフルエンザ、ノロウイルス、カビなどの真菌類などのあらゆる菌を殺菌(89.6%の殺菌効果を実証)する「AERO SHIELD」(エアロシールド)を開発。2006年の創業以来から1500台を販売し好評を得ている。
 エアロシールドは高さ2.1メートル以上の天井付近の壁に設置し、紫外線を安全に照射することで空気中に浮遊している菌を死滅させる。殺菌のためには紫外線灯やオゾンでの殺菌法が利用されてきたが、人がいる場所では使えなかった。空気清浄器ではホコリは除去できても、カビやウイルスなどの殺菌は難しい。一方エアロシールドは紫外線が天井付近に水平に照射されるため、人に影響を与えず24時間の殺菌が可能である。標準タイプであれば1台で40平方メートルの空間を殺菌でき、約1時間で効果が出る。
エアロシールド

 木原寿彦CEOは二代目。同社はもともと先代である父が電気工事会社経営の傍ら、立ち上げたベンチャー企業である。しかし木原氏は、「学生時代から経営には興味があったのですが、会社を継ぐつもりはありませんでした」と振り返る。大学卒業後、「いつかは会社経営をしてみたい」という想いをもちながら、経営について1から学ぶためにセブン‐イレブン・ジャパンに入社。3年で店舗での業務から店舗運営までを一通り身に着けた。
木原寿彦CEO

 その頃エネフォレストでは、農業用水路などに取り付ける小型水力発電事業に参入。木原氏も家業を手伝うことになった。地域のためになる再生可能エネルギーを利用した発電事業を行いながら、一方では感染対策事業に真剣に取り組んでいる父の姿は格好良かった。そして、「エアロシールドと出会って、これは自分がやらなければいけない事業だと、なぜか直感したんです」。

20年間で初めて感染者なし


 エアロシールド開発のきっかけは、病院などの設備設計や電気工事業に携わってきた父が病院での空気感染対策に不足を感じたこと。「さらに開発を加速させたのは祖父の入院でした。同室に入院していた方が空気感染による病気で亡くなり、『早急な対策が必要だ』と実感しました」。2010年に現行型エアロシールドの初代が完成した。そこから6年かけて出力やデザイン、ランプ交換のしやすさなどの改善を重ね、現在販売されているのは5代目となっている。

 導入先は医療関係や介護施設、保育施設、商業施設など幅広い。導入した介護施設では、20年間で初めて外部からの菌持ち込みなどによるインフルエンザの感染者が一人も出なかったという。また食堂や調理場などにもともと設置されていた紫外線殺菌灯からの置き換えも進んでいる。地元である九州での導入例が多いが、最近では大丸東京店に導入された。
トイレに設置された例

 自社で直接販売することもあるが、販売店契約が増えている。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「NEDOピッチ」に参加したことでイオングループから声がかかり、グループ会社の中でも「環境衛生事業」に取り組んでいる白青舎と提携が決まった。NEDOピッチでは提携まで至った初の事例だ。そのほか医療系大手企業や医療系以外の商社などとも契約を結んでおり、今後も順次増えていく予定だという。

 しかし販売には困難もあった。「紫外線は殺菌効果があるという論文も多数出ているのですが、なかなか信じてもらえなかったり、空気清浄器などとの違いを理解してもらえなかったりということも多かったです。効果が目に見えないので実感してもらうのに時間がかかる、ということもあります」。しかしそこは前職で培ったスキルでカバーした。営業先によって説明する内容をこまめに調整し、理解を深めていった。空気感染のリスクについて正しい知識が広まっていない背景には、公衆衛生の専門家が少ないこともある。「公衆衛生は医学関係だけでなく、建築関係や行動学など横断的な知識が必要。啓蒙活動も必須だと考えている」。知識や販売ノウハウを販売店にも展開していきたいという。

 現在は室内用が主だが、新製品開発も積極的に行っている。例えば救急車用にコンパクトタイプを開発。今まではオゾン殺菌で殺菌に時間がかかっていた上に、人がいる空間には入れないため出動要請があっても車を使えない、ということが起こりえた。エアロシールドであれば稼働しながらの殺菌が可能である。また、ベッドと一体になったタイプも開発を進めている。
2020年に東京オリンピックもあり、人が多く集まることで結核や麻疹など集団感染のリスクも高まる。医療費の財政圧迫も毎日のように報じられている。「こういった問題に必ず役立つ商品」と木原氏は胸を張る。

『大分県発ベンチャーの代表』という気持ちを持って


 「大分県の企業だというと珍しがられる」。木原氏は地元の現状を「老舗のモノづくり企業が多く、ベンチャーがまだ少ない地域」と説明する。「大分県ビジネスプラングランプリ」で優秀賞を受賞していることもあり、「『大分県発ベンチャーの代表』という気持ちを持って県外の営業をしています。営業活動を通じて、少しでも大分県のPRになればと思います」。

ニュースイッチオリジナル

前田 亮斗

前田 亮斗
03月14日
この記事のファシリテーター

インフルエンザに結核、MERS・・・感染症対策は今や世界的な課題となっている。 2020年にオリンピック開催を控えた日本でも無視することのできない問題だ。また、近年相次いでいる自然災害での被災地集団生活では、集団感染の事例も発生している。 人から人への感染を防止する紫外線殺菌装置「エアロシールド」は、人と人が実際に接触する空間で、殺菌できることが強みだ。
大分県は製造品出荷額が九州で2番目、再生可能エネルギー自給率も全国1位と、産業と豊かな自然環境が共生する県。自然の持つ大きな力”紫外線”を利用し、大分県から社会課題の解決を目指すエネフォレストのさらなる飛躍を期待したい。

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