いつか国産航空機エンジンを。川重の虎視眈々

「2030年にはOEMの仲間入りをする」その足がかりはMRO

 民間航空機用ジェットエンジンを丸ごと作れる能力を有しているが、自主ブランドを持たない日本。国産エンジンの開発は、日本の航空機産業の悲願だ。現在はIHIや川崎重工業、三菱重工業などが、欧米エンジンメーカーの国際共同事業に参画。部品製造を担うサプライヤーとしての地位を確立している。

 「民間航空機エンジンで世界のメーンプレーヤーになりたい」。川重の航空機エンジン部門を統括する常務取締役の久山利之は、虎視眈(たんたん)と“その時”に備える。

 米ゼネラル・エレクトリックや同プラット&ホイットニー(P&W)、英ロールス・ロイスといったエンジンメーカーと、対等な立場で開発の初期段階から関わることを目指す。

 久山は「いきなりオール国産とはいかない」とした上で、開発・製造を手がけるOEM(オリジナル・イクイップメント・マニュファクチャー)を志向。「2030年にはOEMの仲間入りをする」と力を込める。

 ただ、エンジン開発には高い技術力はもちろん、実績に裏打ちされた信頼性が不可欠。今後数年でその基盤固めを加速する。OEM参入の前提となる知見やノウハウ獲得に向け重要視するのが、エンジンの修理・整備(MRO)事業だ。

 久山は「早ければ21年度に民間エンジンのMRO事業に参入する」と計画を説明。航空機エンジンのMRO事業はこれまで防衛省向けに実施。「基盤になる技術はある」と自信を示す。

 このため、18年度にも明石工場(兵庫県明石市)内にMRO工場を新設する考え。まずはP&Wなどが開発し、欧エアバスの「A320neo」に搭載する「PW1100G―JM」のMROを手がける方針だ。

 とはいえ、先行する巨人たちと真っ向勝負するわけではない。推力10万ポンド級の大型エンジンではなく、「中・小型エンジンのプレーヤーを目指す」と久山。国産機が世界の空で、エンジン音を奏でる日を心待ちにする。
(敬称略)

日刊工業新聞2017年3月7日


エアバス「A320neo」

MRO新工場の全貌


 川崎重工業は2018年度にも、明石工場(兵庫県明石市)内に民間航空機用ジェットエンジンの修理・整備(MRO)工場を新設する。投資額は100億円程度。同社は早ければ21年度に民間用エンジン向け事業に本格参入する方針で、これに伴う投資となる。航空機エンジンのMRO事業はこれまで防衛省向けに実施していた。25年度に航空機エンジン事業で売上高3000億円(15年度比3倍)を目指す計画。MRO事業への参入で目標達成に弾みを付ける。

 まずは米プラット・アンド・ホイットニー、日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTUエアロ・エンジンズが共同開発し、欧エアバスの「A320neo」に搭載する「PW1100G―JM」のMROを手がける。川重は25年度に民間機エンジンのMRO事業に参入する計画を打ち出していた。ただ、1100Gの整備需要が想定よりも早く拡大。4年前倒して21年度をめどに事業を始める考え。

 MRO工場は明石工場内の老朽化した工場棟を建て替える。エンジン性能を確認する試運転設備(テストセル)、エンジンの洗浄設備や組み立て設備などを整備する。MRO事業の人員は、防衛省関連のエンジン整備経験者を中心に100人規模を見込む。

 明石工場ではMRO工場の新設とともに、航空機関連の開発・生産体制を再編する。敷地内に分散していた航空機エンジンのギア製品については、関連設備を集約する。2期に分けてギアの開発・試験施設を建設。1期工事は12月に完成、2期工事は18年度に着手する。延べ床面積は1期、2期ともにそれぞれ4000平方メートル程度となる。

 ギア製品の部品加工工場も17年度に新設する。開発・試験施設と部品工場を合わせた投資額は70億円で、MRO工場を含む明石工場での航空機エンジンの総投資額は、170億円を計画する。

日刊工業新聞2016年12月26日

長塚 崇寛

長塚 崇寛
03月07日
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航空機エンジン全体に絡んでいくには、分解、整備・修理、再組み立てを手がけるMRO事業への本格参入が欠かせない。MROは担当する機種ごとに設備が
必要という。事業拡大の進捗(しんちょく)によってはさらなる追加投資の可能性もありそう。国産エンジンが世界の空で活躍する日を願いつつ

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