ホンダ・鈴鹿製作所のエンジン部品行程が劇的に省エネ化できた理由

金型のコーティング処理、電気炉からIHに。作業時間も8割低減

 軽自動車「Nシリーズ」を生産するホンダの鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)。その一角にあるエンジン部品のとある工程が最近大幅な省エネルギー化を果たした。シリンダーヘッドの金型をコーティング処理する際に使っていた電気炉を、IH(電磁誘導加熱)に置き換えたためだ。

 コーティング処理は金型を保護するのに不可欠な工程。金型にバインダー水溶液を吹きつけた後に、電気炉に入れて180度―230度Cで焼き付ける。1回では均質な膜を張れない。炉から出して、また吹きつけて、炉に入れるという作業を4―5回繰り返す必要がある。エネルギーロスが課題だった。

 2013年、「中部電力が開いた技術展で目にしたIHに着目した」(同製作所エンジン工場鋳造2モジュール)。これでコーティングができないか―。輻射熱で金型を外面から加熱する炉と違い、対象物を内部から加熱できるIHであれば、炉の予熱時間を省ける。炉の開閉で温度が低下することもない。作業も効率化できる。

 シリンダーヘッドの金型部品のうち直径10センチメートル程度の「サブライナー」という円筒状の小さな部品で試した。だが、そのままIH台に載せても温まらない。サブライナーはタングステン製で磁力の影響を受けない。IHは磁性体でないと加熱できないからだ。

 サブライナーの表面を覆う治具を作った。IHで加熱できる素材を使った治具を介して加熱してみた。加熱はできたがサブライナーと治具の膨張率の違いで、サブライナーを治具から取り外すことができなくなった。サブライナーと治具にわずかな隙間を空けてやり直した。均一にコーティングできる温度条件の最適化を探して試行錯誤し、15年実用化にこぎ着けた。

 原油換算にしてエネルギー消費を6割カットできた。作業時間は8割低減。「作業者が炉から受ける熱も減り、作業環境も大幅に改善した」(同)。現在はサブライナーより大きい金型部品にもIHを適用しようと模索を続ける。ホンダがグローバルに持つ他の工場への導入も検討する。
(文=池田勝敏)

【事業所概要】鈴鹿製作所▽三重県鈴鹿市平田町1907番地、059・378・1212▽主要生産品目=軽自動車「N―BOX」、小型車「フィット」など▽生産実績(15年度)=36万4000台▽年間エネルギー消費量(同)=6万5246キロリットル▽年間CO2排出量(同)=12万8690トン

日刊工業新聞2017年3月6日

明 豊

明 豊
03月07日
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省エネだけだと設備投資に対しあまりインセンティブが働かない。作業時間が大幅に減ったところがミソ

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