ゴーン「日産社長」退任に3つの契機。仏政府と厳しい交渉が待っている

三菱自の傘下入り、中計のスタート、ルノーCEOの任期

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長が日産の経営の第一線を離れ、仏ルノー・日産連合のトップの仕事に専念する。異色の企業連合を新たな形に導く狙いがあるとみられる。

 ルノー・日産連合は、世界的にも特異な企業形態だ。1999年、経営危機下の日産をルノーが救済する形で、遠く距離を隔てた日欧間の自動車連合が誕生した。

 ゴーン氏は日産の社長を17年間にわたって務め、「リバイバルプラン」や「コミットメント経営」など大胆な経営手法で立て直したことで知られる。一方、ルノーと日産の関係を深めてグループとして成功に導いた功績も大きい。

 独ダイムラーと米クライスラーは一時期、独米連合を組んだが結局は合併解消に至った。ゴーン氏は互いを尊重するウィン―ウィンの関係でシナジーを引き出した。国際企業連合の新たな成功モデルといえる。

 前例のない企業形態の運営は暗中模索の歴史だ。欧州債務危機によるルノーの業績低迷局面では、「日産の利益がルノーに吸い上げられている」と日本の株主から批判された。2015年には、ルノーの株主である仏政府が日産に経営介入する恐れが生じたこともあった。

 現在のルノーと日産は、完全に独立した事業体ではない。技術開発や生産などの機能の一体化を急速に進めている。ゴーン体制とは、実は非常に長い時間軸の事業統合だと評することもできよう。

 16年秋、この企業連合の傘下に三菱自動車が加わった。三つの異なる事業体を有機的に連携させるには、より高い立場になって指揮する必要がある。これが、ゴーン氏が日産の社長を退任した理由だろう。

 今後の自動車メーカーは、自動運転をめぐりITなど異業種との連携が極めて重要になる。ルノー・日産・三菱自がバラバラで取り組んでいては力を発揮できない。2社で成功させた国際企業連合を、より多くのブランドを展開する複合的な連合に進化させることがゴーン氏の次の目標に違いない。その手腕が注目される。

日刊工業新聞2017年3月6日「社説」

中西 孝樹

中西 孝樹
03月06日
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如何に素晴らしい経営でも、いつかは身を引かねばならない時が来る。日産のCEOからステップダウンするタイミングと目的を、ゴーン氏は慎重に検討してきたと思われる。3つの契機があったと思われる。第一に、三菱自動車をグループ傘下に収め、より複雑なアライアンスの経営を従来とは違う見地から取り組む必要があること。経営責任の分担を見直す必要があった。第二に、日産パワー88が3月末で終了し、次期中期経営計画の立案、実行、その結果を見届けるは、ゴーンCEOの任期が長すぎる。次の体制にその結果責任を担わせるという意味では非常に良い節目であった。第三には、2018年に訪れるルノーCEOの任期に向けて、どの様な経営の姿が最も望ましか、そこに注力する時間がより必要であるということか。フランス政府との厳しい交渉も控えている。

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