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パナソニック、“ポスト津賀”人事混沌

日本MSの樋口会長を専務に招聘。本命候補の1人は退任
パナソニック、“ポスト津賀”人事混沌

津賀社長(左)と樋口氏

 パナソニックは28日、樋口泰行日本マイクロソフト会長を6月29日付で代表取締役に迎える役員人事を発表した。4月1日付で組織を改める社内カンパニー「コネクティッドソリューションズ社(現AVC社)」の社長に就く。社外から代表取締役と社内カンパニートップに就けるのは同社では異例だ。

 樋口氏は松下電器産業(現パナソニック)を92年に退職した後、米ボストンコンサルティンググループを経て、日本ヒューレット・パッカードやダイエーの社長などを歴任した。米アップルなど外資系IT企業に在籍した経験や人脈を生かし、米国を中心とするBツーBシステム事業を引っ張る。

 一方、現在AVC社社長を務める榎戸康二専務は6月29日に取締役を外れて参与となる。米国の航空機向けエンターテインメント機器事業が連邦海外腐敗行為防止法と米国証券関連法に基づいて米当局の調査を受けたことと関係していると見られる。

 また、取締役会の体制の見直しも行い、社外取締役割合を3分の1以上とすることも決めた。

日刊工業新聞2017年3月1日



来年以降も続投論


 パナソニックは約5年前、2年間で計1兆5000億円超の当期赤字を出す経営不振に陥った。経営再建の陣頭に立った津賀一宏社長(60)はプラズマテレビ事業など5%の営業利益目標に届かない事業に撤退や売却の大なたをふるった。同時に、以前に比べて経営判断を透明化、人事案の妥当性を高める仕組みも導入した。

 現在、中長期戦略や重要課題は社長、社内分社長ら約10人が「グループ戦略会議」で話し合い意見を共有する。年2回開く役員合宿でも幹部が距離を縮めて話し、「合宿で決めたことが方針に反映される」(同社幹部)。

 以前より経営判断の透明性は高まった。人事では2015年に社外取締役を委員長とする「指名・報酬諮問委員会」を設置した。社長が委員会に人事案の妥当性を納得させなければならない仕組みだ。

 社内の構造改革に一定のめどを付けたが、足元は売り上げが伸びず成長軌道の手前で足踏みの状態。津賀社長には過去を上回る増収増益への強い思いがある。

 当初は直近2社長と同じ6年の任期を18年に終えると見られたが、最近は「18年以降も続投」との見方が増えた。津賀社長を支えるのは社内分社4社長を含む7人の代表取締役専務。後継者は専務経験者から選ぶのが順当だ。

 18年に社長交代があるなら、最有力は家電部門トップの本間哲朗専務(55)。経営企画で津賀社長を支えた実績がある。15年に同社本流のAVC社社長に抜てきされた榎戸康二専務(56)も候補。BツーB分野を成長軌道に乗せることが必要条件となる。

 一方、津賀社長が18年以降も続投する場合、後継候補は若手の役員や幹部まで広がる。

 有力なのは家電分社副社長の楠見雄規役員(51)。幹部候補生のエリートで津賀社長と同じ旧無線研究所の出身。「頭が良く、目上の人にも物怖じせず意見する」(同社幹部)。社長に面と向かって意見していた津賀社長とも通じるところがある。

 テレビ事業を黒字化した品田正弘テレビ事業部長(51)を推す声もある。

日刊工業新聞2017年1月12日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
津賀さんは社長就任して5年。早ければ来年にも社長交代があると見られている。本命は本間、榎戸の2人の専務とみられてきた。今回、榎戸氏は退任。本間氏は白物家電を中心としたコンシューマー全般を引き続きみるが、「取締役」の位置付け見直しにより、取締役から外れる。一方でMSからやってくる樋口さんは、専務執行役員でいきなり代表取締役にも就く。津賀さんと樋口さんは年齢も近く、出戻りとは言え外部からいきなりトップになるのは考えにくい。来年100周年を迎えるパナソニック。津賀さんがさらに続投し、もっと若い世代につなぐ可能性も・・。

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