パラリンピック陸上選手の“IT伴走者”、フォームの改善試行

NTTデータの中田崇志さん。「世界を目指す人と一緒にいるとモチベーションが上がる」

 NTTデータの中田崇志さんは昨夏、リオパラリンピック陸上競技の和田伸也選手の伴走者として出場した。和田選手は1500メートルと5000メートルで6位、マラソンで5位に入り健闘した。メダルには届かなかったが、1500メートルでは自身の日本記録を更新した。中田さんは「ブラジルの観客は熱狂的で競技自体を楽しんでいた。選手の力になれたと思う」と当時を振り返る。

 「ITで社会貢献したい」との思いから、2002年にシステムエンジニア(SE)として入社。主に、公共関連の情報システムを構築していた。現在は管理部門に在籍し、毎年1回、IT業界のトレンドや自社の新サービスを披露する「イノベーションカンファレンス」など社外イベントの企画・運営に携わっている。

 中学生から始めた陸上では、大学時代に日本学生陸上競技対抗選手権大会に出場し、3000メートル障害で7位入賞の成績を収めた。だが実業団の選手になろうとは思わなかった。その理由を「陸上は『強い趣味』といった感じかな」と笑いながら説明する。

 そんな「強い趣味」が高じて始めたのが、視覚障害がある陸上選手の伴走者。04年のアテネパラリンピックの出場を目指す選手が、陸上専門雑誌で伴走者を募集していたことがきっかけだった。

 伴走者は速く走るという行為は変わらないが、自分のペースでは進まない。走りやすいように腕の振り方など選手に配慮した走りが必要となってくる。

 伴走者を続けていく上で実感しているのは「会社の理解」。パラリンピックのような大きな国際大会では、3週間ほど休みを取らなければいけないからだ。

 和田選手とは10年から走り始めた。12年のロンドンパラリンピックでは銅メダルの獲得に貢献した。両者は東京と大阪でそれぞれ暮らしており、普段は離れているため、中田さんは仕事を終えた夜12時から一人で練習している。時間が作れない時は自宅がある駅の3駅前で降りて、スーツを着たまま走って帰る時もある。

 既に和田選手とは20年の東京パラリンピックを見据えた練習を開始した。今は、より能力を伸ばすために、ITを駆使しようと試行錯誤している。

 NTTと東レが開発した機能素材を着用してもらったこともある。着るだけで生体情報を取得できる優れものだ。重心が曲がっているかどうかなど、競技中の姿勢を数値化して理解してもらった。

 将来は「アプリケーション(応用ソフト)も開発できたら良い」と考えている。「世界を目指す人と一緒にいるとモチベーションが上がる」と伴走者としての経験が日々の生活の糧となっている。

日刊工業新聞2017年2月28日

明 豊

明 豊
02月28日
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コーチや指導者ではなく「伴走者」。それをテクノロジーが結びつけるというすばらしい関係性。伴走者という発想は、パラリンピックに限らずあらゆるスポーツ競技にも展開できる。

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