ルネサス、アナログ半導体買収で成長スピードは早まるか

2020年をめどに170億円規模の相乗効果を見込む

 ルネサスエレクトロニクスは電力制御集積回路(IC)やアナログ半導体などを手がける米インターシルの買収を24日付で完了したと発表した。買収額は3200億円程度。ルネサスはマイコンが強みで、自動車や産業機器向け事業を強化している。インターシルの買収により、ラインアップ拡充や海外販売網の拡大などを狙う。2020年をめどに170億円規模の相乗効果を見込む。

 ルネサスの呉文精社長は「両社の強みを合わせて先進的な組み込みシステムを幅広く提供できる業界リーダーとなる」とした。両社は16年9月に完全子会社化することで合意していた。買収完了に伴い24日付でインターシルのネイジップ・サイナエアー最高経営責任者(CEO)がルネサスの執行役員常務に就任した。インターシルのCEOも兼務する。インターシルの本社、生産拠点や設計拠点などは維持する方針。7月をめどに組織の再編などの事業統合を進める。

 インターシルの15年度の売上高は5億2160万ドルで、直近1年間の営業利益率は20・5%。

日刊工業新聞2017年2月27月


呉文精社長インタビュー


 ―主力の車載マイコンは自動運転技術の進展で追い風が吹いています。
 「自動ブレーキやレーダーなど、安全運転や自動運転に関するオプションの装着率が伸びている。3割くらいだとみていたが、実際には7―8割が装着するという事例が起きている。加えてスマートメーター(通信機能付き電力量計)やスマートホームなど、あらゆる所にマイコンを入れて制御しようとする動きがあり、そちらも伸びている」

 ―フル稼働が続く後工程(検査・組み立て)への対策は。
 「車載向けは信頼性や品質、カスタマイズの要求が高いため、自社工場を増強して対応する。ただ全て自社で抱えるのは非効率。生産委託先への技術指導を進め、外部での生産を増やしていきたい」

 ―重点施策であるグローバルマーケティング機能の強化をどう進めますか。
 「日本以外の市場が事業をけん引していることが多いため、全て(の判断)を日本に持ち帰って(決めて)いたらスピード感が追いつかない。最も市場が伸びている所に司令塔を置き、ある程度の権限を与えて迅速に意思決定できるようにする。例えば先進安全運転支援システム(ADAS)なら日本と欧州、スマートファクトリーならドイツ、中国なら電気自動車といった形だ」

 ――6月末をめどに米インターシルの買収が完了します。
 「上期中には手続きを完了したい。今、組織のあり方や具体的にどう相乗効果を出すかなどを議論している。アナログ分野などはインターシルが中心になる。日本以外にも本社を作り、グローバルに統括することを考えている。下期が始まる7月1日をめどに体制を整えたい」

 ―次なるM&A(合併・買収)の考え方は。
 「必ずしも買収ではなく、ライセンスやジョイントベンチャーなど方法はいろいろある。対象は必ずしも半導体メーカーとは限らない。無線通信やセンサー、セキュリティーといった領域を強化する必要がある」

日刊工業新聞2017年2月6日

日刊工業新聞2017年2月27日記事に加筆

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
02月27日
この記事のファシリテーター

「寡占化が進むアナログ半導体市場で、インターシルの買収は千載一遇のチャンスだった」。買収合意を発表した会見の席で、ルネサスの呉社長は意義をこう表現した。自動化が進み省電力がテーマとなる自動車向けでは、ルネサスが強みとするマイコンとアナログICのセット提案が今後不可欠となる。優れたアナログ技術者が不足し、米マキシムもインターシル買収に動いていたという話がある中、今回の案件は妥当だったと言えるだろう。しかしアナリストらからの「本当にシナジーを出せるのか」「高値づかみではないのか」との指摘は根強い。ルネサスは成長路線への回帰が見え始めており、懸念を払拭するには成果を数字で示すしかない。

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