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東日本大震災からもうすぐ6年。福島で動き出す新産業 

福島の官民プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」(上)
東日本大震災からもうすぐ6年。福島で動き出す新産業 

南相馬市に2拠点を置く日本オートマチックマシンは新工場の建設を計画する

 東日本大震災から間もなく6年を迎えようとしている。東京電力福島第一原子力発電所の事故により避難指示が出た福島県内12市町村では、事業者は営業が継続できなくなったり、拠点の移転を余儀なくされたりした。2015年8月24日、国・福島県・民間からなる「福島相双復興官民合同チーム」が創設され、事業者などの支援に乗り出した。官民合同チームや、国や県による「福島イノベーション・コースト構想」の取り組みを追った。

構想具体化の年


 政府は福島イノベーション・コースト構想の法定化を含めた「福島復興再生特別措置法改正案」を10日に閣議決定した。高木陽介内閣府原子力災害現地対策本部長(経済産業副大臣)は、11日に福島市で開かれた「第8回イノベーション・コースト構想推進会議」の終了後、「各省庁とも連携して、国が最後まで責任を持って取り組んでいく。まさに構想を具現化するスタートの年になる」と意気込みを語った。

 福島相双復興官民合同チームは総勢207人で、県内(福島、郡山、いわき、南相馬)および都内の合計5拠点に常駐している。チーム発足翌日から事業者訪問を始めた。これまでに延べ5000回以上の事業者訪問を実施し、販路開拓や人材確保などについて聞き取りを行った。このうち専門性の高いコンサルタントの訪問も延べ1000回を超えている。

楢葉町に試験棟、4月に本格運用


 福島イノベーション・コースト構想の実現に向け、拠点の整備を推進するとともに、地域産業の復興に資する実用化開発などを支援し、プロジェクトの事業化と具体化を図る。福島県楢葉町では原子炉格納容器下部の漏えい箇所を調査・補修するロボットなどの開発・実証試験などの実施を想定。4月頃に試験棟を含めた本格運用を始める予定となっている。

 「福島浜通りロボット実証区域」は、橋梁、トンネルおよびダム・河川、山野などを利用したロボット実証区域。16年12月22日時点で、14の開発事業者が31の実証操縦者試験を希望している。2件の実証試験が行われ、その他については市町村とマッチング中だ。

地域企業と連携


 大手企業ではIHIが実用化開発プロジェクトの一環として、無人航空機(UAV)事業に参入する。不定形の段ボールに入った災害救援物資を安全に、人手をかけずに孤立した場所へピストン輸送する。浜通り地域で組み立て、操縦者育成拠点を整備。自動化設備を得意とする協栄精機(南相馬市)とUAVおよびこれに搭載する物資保持機構を開発した。

 ロボット以外ではエネルギー、環境・リサイクル分野などで、県内企業が新規事業や新たな生産拠点の立ち上げに乗り出している。

(3回連載)
日刊工業新聞2017年2月23日
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
先日インタビューした東北経済界の関係者は復興を遂げる過程で、自立的でダイナミックな地域経済の姿を実現したいと話していました。言葉のひとつひとつに重みがあったことが印象に残ります。

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