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福島第一原発、燃料デブリ目視失敗。サソリ型ロボットは手詰まりなのか

東電、計画修正急ぐ
 東京電力は福島第一原子力発電所2号機にサソリ型ロボットを投入したが、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の目視はかなわなかった。一連の調査では自走式のロボットよりも、さお付カメラが成果を上げた形だ。2号機は燃料デブリなどの詳細な情報がないまま、夏ごろにデブリ取り出し工法の方針を決める。だが手詰まりではなく、見通しはある。今回の調査を反映して計画修正が進んでいる。

 「放射性物質を外部に漏らさず、大がかりな調査を安全に実施できたこと自体を最大の成果としたい」と東電原子力・立地本部の岡村祐一本部長代理は強調する。

 2号機では圧力容器の下を調査するため、7段階の調査を実施した。10メートル以上のさお付カメラや自走式ロボ2台を組み合わせ圧力容器を支える構造物(ペデスタル)の内側を調べた。

 ただ調査の最後のサソリ型ロボは、ペデスタルにたどり着けなかった。クローラーに堆積物の破片がかみ込んだとみられる。そこでペデスタル途中のレール上で格納容器の配管などを撮影して調査を終え、格納容器内に残置された。
                     

2つのケース


 未知環境でロボットを走らせる困難さが改めて鮮明になった。今後、サソリ型が撮った画像を解析し、配管の損傷など詳細な情報が得られる見込みだ。

 この経験は次の調査ロボに生かす。もともと二つのケースが想定されていた。圧力容器下の作業空間(プラットホーム)が利用できれば、サソリ型をベースにした小グモロボ、難しければ大型の大グモロボを開発する。

 小グモロボはサソリ型の尻尾の代わりにカメラセンサーをつり下げるユニットを付ける。投入装置はサソリ型のノウハウを転用できる。大グモロボはプラットホームには進入せず、レール上からアームを伸ばしてカメラセンサーをつり下げる。

 プラットホームは進入してすぐの所に、燃料デブリが通過したとみられる穴が空いており調査しやすい。ただ投入装置は大がかりな工事が必要だ。投入口周辺は一度、除染を断念している。

 また候補に考えられるのはさお付カメラの強化だ。肘をつくように支点を設ければ試料採取のような力仕事も不可能ではない。まだ調査方式は決まっていない。サソリ型で得た知見を反映し、2018年度中ごろの調査を計画している。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2017年2月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
手詰まりや抜本的見直し必須と取り上げられるサソリ型ロボが、失敗を恐れて調査が遅れることが一番の問題。サソリ型の撮影した映像を画像処理すれば、格納容器内の配管の状況がわかる。210シーベルトや650シーベルトをたたき出した線源が、どのように圧力容器やペデスタルの外に広がったのか特定する材料になる。17年夏にまとめるデブリの取り出し方針は、必要な技術開発を遅らせないことと、福島の復興を妨げないことを重視した形で発表されそう。東電は手詰まりや抜本的見直し必須と、まるで方法がないように報道された副作用を打ち消す材料を用意できるか。工法の決定は18年度の中頃で、その前に大グモロボか小グモロボの調査が予定されていた。個人的にはさお付カメラに肘を付けるのが良いと思う。大学の研究者は長尺のロボットアームを東電やメーカーに売り込でほしい。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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