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若者が百貨店のファッション売り場に行かない理由

アパレル業界人とゾゾタウンはどこか違うのか
 衣料品が売れない状況が続いている。低迷の理由として「若い消費者のファッション離れ」が指摘されている。

 日本百貨店協会が発表した2016年の全国百貨店売上高は、15年比2・9%減(既存店ベース)の5兆9780億円だった。6兆円を割り込むのは1980年(5兆7225億円)以来36年ぶりである。

 売り上げ構成比で3割を占める衣料品の不振が目立つ。婦人服(6・3%減)、紳士服(5・3%減)、子供服(3・9%減)は共に前年割れ。

 目立ったファッションの流行がなく、低価格のカジュアル衣料の活用したおしゃれが若者に浸透している。

 通販サイトや交流サイトで買い物をする人も増え、百貨店は流行発信源になりにくくなっている。現状アパレル業界は売り上げを左右する要素が多く、世相の流行にも大きく影響される分野である。年によって全く違う流行へ対応する必要がある業界なので、企業の施策ひとつで売り上げに大きく影響する。

 近年、おしゃれの傾向が大きく変わりつつある。それは「ファストファッション」の台頭が原因である。低価格で流行に合わせた商品を量産するファストファッションが、アパレル業界のバランスを大きく変える要因となっている。

 ファストファッションの強みはシンプルゆえにどの年齢層でも着ることができるという点である。ユニクロでおなじみのファーストリテイリングには、若い人からお年寄りの方まで幅広い客が来店しており、業界で圧倒的な売り上げをみせている。

 アパレルのオンラインショッピングサイト、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営する「スタートトゥディ」は「世界中をかっこよく、世界中に笑顔を」という企業理念のもとに、衣料品不況が叫ばれる中、2016年3月期の売上高544億2200万円(前期比32・1%増)の業績を上げている。

 日本のアパレル小売市場規模は約9兆3500億円(繊研新聞推計)と言われている。

 既存企業では長年競争し成功した体験を持つ多くの「業界人」は想定外のライバルの出現や消費者のおしゃれ意識の変化に対しての対応が遅く、時代の変化に取り残されていることが、アパレル産業の大きな課題である。
(文=上野延城・日本経営士会)
日刊工業新聞2017年2月16日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
もう何年も百貨店で衣料品を買っていないし、ゾゾでも買い物をしたこともない。もっとも買っているのは「ZARA」。バブル世代として高価なDCブランドを買っていた時代を懐かしく思うと同時に、「業界人」どうこうよりも、そもそも日本の中間層が貧しくなっているからだと考える。

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