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コンビニ向けのAIシステムを新興国に売り込むNECの勝算

石井力執行役員常務に聞く「狙うのはミニスーパーなどの小型店だ」
コンビニ向けのAIシステムを新興国に売り込むNECの勝算

NECは台湾セブンイレブンに店舗システム機器を納入(写真はイメージ)

 NECは、日本のコンビニエンスストア向けで培った多店舗型小売り業向けITソリューションの海外展開に乗り出す。経済成長で中間層が拡大する東南アジアなど新興国に照準を定め、商品の需要予測システムや24時間・365日店舗運営を続ける遠隔監視の仕組みを海外に移植し、現地主導で事業拡大を目指す。石井力NEC執行役員常務に今後の展開を聞いた。

 ―日本のコンビニの仕組みが新興国で通じるのでしょうか。
 「タイやインドネシアの都市部は所得が上がり、単身者が増えるなどで生活形態が変化している。日本のコンビニ業界が伸びてきた状況と同じ流れが新興国で起きている」

 ―海外は米大手ITベンダーがすでに進出しています。勝算は。
 「米国のウォルマートのような大規模店は販売品目が数十万点に及ぶ。ここは米IT勢が強いが、当社が狙うのはミニスーパーなどの小型店だ。販売品目は数千点を想定しており、日本のコンビニのノウハウが適用できる」

 ―強みとは。
 「需要予測は回転数が早い日用品の単品管理で強みを生かせる。ある商品を値引きする際に、店全体の売り上げが落ちないように、特売品と関係性が強い商品を人工知能(AI)で判断することも可能だ。併せて店舗運営を24時間・365日止めない遠隔監視の仕組みも提供したい」

 ―具体的には。
 「販売時点情報管理(POS)だけでなく、什器(じゅうき)も含めて店舗を丸ごと集中管理する。賃金上昇で人手が増やしにくくなればITが必要となる。AIによるトラブルの予兆検知も有効だ」
(聞き手=斎藤実)

日刊工業新聞2017年2月17日


              


AIを活用した遠隔監視サービスを展開


 NECはコンビニエンスストアなど多店舗型小売り業を対象に、人工知能(AI)を活用した遠隔監視サービスの提供を始めた。販売時点情報管理(POS)システムなどIT機器に加え、冷蔵庫など什器(じゅうき)全般に監視対象を拡大。店舗の稼働停止を防げる仕組みを訴求する。コンビニ向け商品需要予測技術と合わせ、店舗運営を丸ごとAIで支援するソリューションを確立し、新興国など海外市場にも展開する。

 小売り業向けIT事業は2015年度の売上高が1300億円。現在は国内が中心だが、21年度までに売上高を2500億円に倍増させ、このうち海外比率を半分程度に引き上げる計画。その目玉として、日本のコンビニシステムのノウハウを海外に持ち込み、現地主導で事業拡大を目指す。

 すでにコンビニ向けには設備の稼働状況や電力の使用量などをIoT(モノのインターネット)でモニタリングするサービスを提供している。今後はAIを活用することで什器を含めて店舗を丸ごと監視できるサービスとして提供する。トラブルの予兆検知や商品の品質向上に役立てられる。

 店舗では新規に使う什器が増えており、管理が煩雑になっている。例えばカフェマシンの場合、今回のサービスを活用すれば、フィルターの最適な掃除時期をアラームで告知し味の劣化を防げる。

商品の需要予測技術は、商品回転率の高い日用品の販売で強みを生かせる。ある商品を値引きする際、店全体の売り上げが落ちないように、特売品と関係性が強い商品をAIで判断して品ぞろえに加え販売できる。

 海外展開では日本のコンビニのノウハウが発揮できるように、販売品目が1万点未満のミニスーパーなどをターゲットとする。具体的にはタイのバンコクやインドネシアのジャカルタなどを想定。いずれも経済発展で中間層が拡大する一方、賃金の上昇で店員を増やせなくなっており、AIの効果が大きいとみている。

 また市場開拓のため、現地のIT企業の買収なども視野に入れている。
                  

日刊工業新聞2017年1月25日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
NECは海外のソリューションビジネスはお世辞にも得意ではない。過剰スペックを押しつけてもうまくいかないだろう。ミニスーパー向けで収益がとれるのかも気がかり。日本のコンビニもアジアへの進出で攻勢をかけているが、その辺りの取り込みはどうなっているのだろうか。

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