群馬・髙崎から抗がん剤を欧米へ!

協和発酵キリン・高崎工場、カギとなる原薬生産をどうする?




新井仁高崎工場長インタビュー


 協和発酵キリンは生物由来のバイオ医薬品を得意としており、中でも遺伝子を組み換えた動物細胞を培養してつくる抗体医薬品に力を注いでいる。抗体医薬品では抗がん剤「モガムリズマブ(一般名)」などを欧米へ展開する計画があり、生産拠点の高崎工場(群馬県高崎市)で設備の増強を進めてきた。将来も高品質な製品の安定供給を実現できるのか。新井仁高崎工場長にこれまでの取り組みや今後の展望を聞いた。
新井仁高崎工場長

 ―高崎工場の位置づけや役割は。
「バイオ医薬品生産の最重要拠点だ。当社に工場は三つあり、富士工場(静岡県長泉町)と宇部工場(山口県宇部市)では(化学合成によりつくる)低分子医薬品の製剤を手がけている。一方、高崎はバイオ薬の原薬と製剤の両方を担当する」

 ―約71億円を投じて大規模な原薬生産設備を導入しました。
 「バイオ薬のパイプライン(開発品一覧)が充実してきて、原薬を内製するために新たな製造棟『HB6』をつくった。細胞培養に使う容量12トンのタンクを導入したので、当面の生産能力はこれで充足する。米国や欧州への製品供給に向け、当局の査察を今後受ける。商用生産開始は2019年の予定だ」

 ―多品種少量生産への対応も必要では。
「臨床試験用の薬はHB6とは別の棟にある2トンのタンクを使ってつくる。商用生産では製造品目の切り替えを円滑に行いたい」

 ―人材育成はどのように進めますか。
 「建物だけができてもダメで、GMP(医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)を理解した専門家や作業員の育成が非常に重要。GMPや安全衛生、法令順守などを学べる講座を展開している。まずは座学から入り、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで身につけさせる。今後は講座の体系化を進めて定着させたい。これらの単位を取ったらこれができる、といった社内資格制度へつながっていくかも知れない」

 ―製剤技術はどう強化していきますか。
 「原薬生産については、当社内で蓄積した知見が豊富にある。製剤となると、より幅広い技術が必要になるので、外部資源の活用も得策と思う。必ずしも内製にこだわらず、すみ分けていきたい」
(聞き手=斎藤弘和)

日刊工業新聞2017年2月16日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
02月16日
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抗体医薬品の原薬製造における培養工程では、遺伝子や細胞特性に不測の変化を起こさせない安定性が求められる。ウイルスによる汚染などを防ぐ安全性も重要だ。精製工程では、不純物を含む培養液から目的の抗体のみを確実に取り出す必要がある。協和発酵キリンは、これらの作業効率を改善できる知見の確立を重視している。製剤の外部委託を選択肢に入れたことは優先順位づけの結果とも言える。今後もコア技術の深耕が期待される。
(日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤弘和)

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