バイク過給器の源流は「飛燕」にあり。技術重視へ原点回帰する川重

縦割り構造打破、社内の力を結集

 「今のままで良いのか」。川崎重工業社長の金花芳則は、自問自答する。三菱重工業、IHIとともに三大重工メーカーの一翼を担うが、首位の三菱重工とは売上高で2倍以上の開きがある。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスといった、世界の巨人の背中はさらに遠い。その差を縮めるには「各事業の資源を組み合わせた新技術の創出が一番の強み」と金花が強調する通り、技術重視への原点回帰が突破口となる。成長に向け、原点回帰を意識しながら変革へと突き進む。

 川重は1世紀以上の歴史を重ね、造船や航空機、鉄道車両など他社の参入障壁の高い事業を育んできた。だが、時の流れは容赦ない現実を突きつける。新たなライバルの台頭−。造船や鉄道で中国・韓国に肩を並べられ、航空機では中国が国産旅客機を飛ばすまでになった。

 創立120年を迎えた2016年に社長に就任した金花は「参入障壁の高さに安心してはいけない」と猛省。事業間の縦割り構造を打破し、技術融合の意識を再び社内に呼び戻すことを誓う。

 16年10月、神戸市。第二次世界大戦中に川崎航空機工業(現川重)が製造した旧陸軍の戦闘機「飛燕(ひえん)」が、70年ぶりによみがえった。創立120周年イベントの一環だが、その意図は周年行事に留まらない。

ROIC重視も、伝統の重みに心は揺れる


              

 真の狙いは、飛燕と並べて展示した製品にある。川重の最高峰スポーツバイク「ニンジャH2R」。この2機は深いつながりがある。

 ニンジャのターボチャージャー(過給器)技術や空力設計の源流は、飛燕にある。「120年の多様な取り組みが、他社の追随を許さない技術へ昇華した」(金花)とこの展示で連綿と紡いできた技術の系譜を社内外に示した。

 技術力の高さは顧客の評価にも裏付けられる。米ボーイングのサプライヤー・マネジメントディレクターのジェフ・ハンリーは「卓越した技術力や品質に高い優位性がある」と称賛。

 社長就任前、全工場を訪れた金花も同じことを感じた。若い技能者が金花に目を輝かせ、技術を説明する。「彼らを見ていたら希望が湧いてくる」と金花は笑顔をみせる。

 ただ祖業の造船事業は、海運市況低迷や建造工程の混乱などで収益化が悪化。「撤退を含め抜本的に見直す」(金花)までに追い込まれた。投下資本利益率(ROIC)を軸とした高収益企業への転換を志向する中、祖業とはいえ例外はない。

 「ROICは当社の経営バイブル。造船も8%の目標を達成できる形を考える」と金花は言い切る。自力での存続か、他社との提携か―。「できるなら残したい」。変革を担う金花だが、伝統の重みに心は揺れる。だが、立ち止まっている時間はない。(敬称略)

日刊工業新聞2017年2月14日
日刊工業新聞電子版

明 豊

明 豊
02月16日
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もはや「造船・重機業界」という言葉は死語に近い。それでも大手メーカーの他社への意識は強い。各社とも課題事業を抱え、構造改革競争になっている。ROICを重要指標とし改革を進める上で、「フラッグ」が必要だ。それが技術重視なのだろう。日刊工業新聞では現在「挑戦する企業 川崎重工業編」を連載中などのでぜひご覧下さい。

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