キーマンのチャットが飛び交う新日鉄住金の“IoT製鉄所”

まず作業員の安全性向上や若手への技能伝承から

 新日鉄住金がIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)を活用した製造現場の革新に挑んでいる。合併前の旧2社の基幹システム統合と並行し、これらの高度ITを現場へ積極的に導入中。まず作業員の安全性向上や若手への技能伝承、設備保全などにつなげる試みを始めた。

 2016年4月に専門組織「高度IT活用推進室」を発足。システム部門や研究所、設備保全にグループの新日鉄住金ソリューションズからも専門家を迎え、業務に着手した。

 高度ITを「IoTによるデータ収集、ビッグデータ解析、そしてAIでいかに制御するかの3段階からなる」(米沢公敏執行役員)と定義。特にビッグデータ解析は「各製鉄所のキーマンも加わり、バーチャルな組織として20―30人にはなる。

 お互いにチャットなどを通じて交流しており、現場の課題を知る人と高度な解析ができる人が結び付いている」(同)と胸を張る。

 先行しているのが保安対策。新日鉄住金ソリューションズなどのシステムを活用し、2カ所の製鉄所で実証実験中だ。一つは単独作業者の見守り支援。作業員が保持する携帯端末や腕時計型の活動量計からリアルタイムで大量データを収集。管理者はこれを基に遠隔から危険情報を現場に伝える。

 例えば、全地球測位システム(GPS)や温度・湿度計からは危険な場所にいないかどうか、気圧計からは高い場所にいることが確認できる。加速度計では、その変化から落下可能性も瞬時に察知できる。

 また、活動量計の心拍数からは本人に自覚のない熱中症を予防できる。「熱中症になるかどうかは人によって違うので、どんな条件で警告を出すかが難しい。ディープラーニングも入れながら開発を進める」とAIの活用にも期待を寄せる。
作業者は情報端末を装着(新日鉄住金ソリューションズのシステム)

 さらに、見守り支援のシステムとカメラ付きの眼鏡型ディスプレーを使い、熟練工が遠隔から若手作業者に指示すれば、技能伝承の一助にもなる。

 「若手が現場で判断に困ったとき、カメラ映像を上司に送り、判断をあおぐこともできる」と用途は多様。カメラの動画像から作業者が不安全行動を取っていないかを判断するシステムも考案中だ。

 設備保全ではビッグデータを基にAIで予知・予測し、トラブル発生前に手を打てるようにする。各設備の設置センサーからの大量データを「クレンジングしたり、アルゴリズムでコードデータ化して、予知・予測に使えるようにする。

 過去の故障データと突き合わせ、本当に故障につながるのか、何でもない変動なのか、AIでそのロジックをつくる」計画。同じ仕組みで製品の品質予測にも応用する。
(文=大橋修)

日刊工業新聞2017年1月30日

日刊工業新聞 記者

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02月14日
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ただ、AIは「過去にさかのぼって調べるのは得意だが、どうすればさらに良くなるのか、環境が変わったらどうするのかまでは分からない」(米沢公敏執行役員)といった限界もある。変化の激しい鉄鋼業界では、「最後は人の判断になる。AIはそれをサポートする」役割であることも強調する。
(日刊工業新聞第ニ産業部・大橋修)

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