土佐藩と村上藩から学ぶ「持続可能な調達」

限りある資源を使い切ることの愚かさ。最終製品の購入者には見えにくい現実

 四国・土佐藩家老の野中兼山は、江戸から持ち帰ったハマグリを繁殖を期待して自国の海へ投じ「末代までの土産」にしたという。安倍晋三首相が施政方針演説で紹介して有名になった。

 小泉純一郎政権時代の「米百俵の精神」を思わせるが、実際には高知にハマグリは根づいていないとの地元の声。憲法改正を意図し、目先の利益より未来を展望して後世に恵みを残そうという首相の思いは、いささか空回り。

 どうせなら、こんな逸話はどうか。越後・村上藩で名産のサケの不漁が続いた。下級武士の青砥武平次は、秋に遡上(そじょう)するサケをすべて捕らえず、分流に産卵場所を作ることを考案。藩主に直訴した。

 同時に春の川下り時の漁を禁じる。藩はこの『種川の制』を採用してサケの漁獲を大きく増やし、財政を再建。村上領の三面(みおもて)川には明治に入って「鮭産育所」が設けられ、ここから天然増殖法が北海道などに広まった。

 兼山も武平次も、限りある資源を使い切ることの愚かさを説いた。現代流に言えば「持続可能な調達」だ。東京五輪・パラリンピックの競技場工事では、コンクリートの型枠などに使う木材が違法伐採かどうかを確認するという。後世への恵みとは、こういうことであろう。

日刊工業新聞2017年2月7日

土田 智憲

土田 智憲
02月12日
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伝統産業に関わる仕事をしていると、逆に需要が減ることで持続可能な調達ができなくなる現場に遭遇する。最終製品をつくる職人が使用する道具や資材。その道具や資材を調達する職人の高齢化や跡継ぎ問題起きている。未来から見ても人を魅了するような伝統が、ここに従事する人が減ってしまうことで、伝わらなくなってしまう可能性がある。ここで起きている問題は、最終製品の購入者にはとても見えにくい事実である。

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