被災地の声から生まれたLPガス「炊き出しステーション」

岩谷産業が1000台を設置。きっかけは社長の鶴の一声だった!

 可搬性に優れた分散型エネルギーの液化石油ガス(LPガス)。災害時は、その特性を生かし避難所の給湯や暖房、調理用の熱源として重用されている。岩谷産業は2012年9月に最大120人分のご飯と汁物を同時に作れるLPガス専用調理機器「炊き出しステーション」を開発した。LPガスの災害対応力を引き出す機器として、これまでに約1000台を出荷。各地に配備されている。

 大規模災害が起こるたび、災害に強く復旧も早いLPガスへの関心は高まる。その関心を従来のように一過性として終わらせなかったのが、11年3月に発生した東日本大震災だった。

 被災地のライフラインが寸断された時も、LPガスはいち早く緊急エネルギーとして活躍。教訓を生かし、国も「災害に強いLPガス」確立に動く。

 岩谷産業の炊き出しステーションもLPガス災害対応力強化の一環だ。開発のきっかけは当時社長の牧野明次会長兼CEO(最高経営責任者)による“鶴の一声”。

 被災地に入り、あちこちでガスボンベとコンロをつないだ即席の調理機器を見て“炊き出しセット”の企画を指示。試行錯誤の末に完成させた。
実際に炊き出しステーションを使った訓練

次ぎは非常時だけでなく


 「温かい食べ物を皆の前で作って出す」をコンセプトに炊飯釜とずんどう鍋、コンロ、置き台、風防を組み立てキットにした。炊飯12キログラム、汁物23リットルを同時に調理できる。価格は32万円(消費税抜き)。使わない時は約2分の1サイズまでコンパクトにして収納できる。

 学校、病院、老人ホームや公共施設に納入したほか、LPガスを充てんする各地のガスセンターに配置。耐震性の高いガスセンターは、地域の防災拠点としても活用できる。

 また、LPガス販売店は災害時に復旧部隊「マルヰガス災害救援隊」としても活動し、炊き出しステーションを備えている店も多い。

 原昇平常務執行役員は「東日本大震災でBCP(事業継続計画)が見直された」と振り返る。貯槽やボンベなど常に半分以上のガスを確保するように監視・配送しているLPガス。

 この利点を生かすため、調理機器のほか非常用ガス発電機も新たに商品群に加えた。さらに、補助金対象となることも訴求する。

 岩谷産業は非常時だけでなく、常時からLPガスの採用が広がるよう「空中戦略」(原常務執行役員)と称する営業攻勢をかけている。都市ガス供給地域でも指定避難所として地域住民の受け入れ態勢の充実を図る病院、学校、店舗などに焦点。LPガスの供給システムと給湯、空調、発電といった機器をセットで提案を進めている。
(文=大阪・小林広幸)

日刊工業新聞2017年2月6日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
02月07日
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炊き出しステーションも常時から使ってもらえるように、改良機を開発中だ。現行ステーションでの炊飯はいわば、大型の飯ごう。慣れていないと、うまく炊きあげることは難しい。このため、「誰もがおいしく炊きあげられるようにする」(原常務執行役員)のが目標だ。完成すれば、ちょっとしたイベントでも手軽に使ってもらえるようになるはず、と期待を膨らませる。
(日刊工業新聞大阪支社・小林広幸)

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